風吹きぬける大地W

□秘密の側面
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「ふぅ……」

ずっと研究所の部屋に篭っていると息が詰まる。


いくらクレインがインテリとはいえ簡単な基礎トレーニングを欠かしたことはない。目立たないが、筋肉だってちゃんとあるのだ。

ただ優しげな風貌と、研究者という先入観からクレインは運動が苦手だと思っている人は多い。


「あ、クレイン所長!」

そこにリュウトがやって来た。

「リュウト君、どうかしたの?」

「ここ……分からないんですけれど」

どうやら通信教育で分からないところが出たらしい。

学校の少ないオーレ地方では、通信教育で勉強する子供が少なくないのだ。

リュウトがテキストを広げる。

「ああ……成程」

簡単な数学の問題だ。

これがもし歴史だとすると、今度はどこまで教えていいか分からない。

「簡単な方程式だよ。ここを……」


とっさに、クレインはリュウトを抱き込んだ。


「しょちょ……!?」



ガシャン!



窓ガラスが割れる音がどこか遠くのことのように聞こえる。


すぐにクレインはリュウトを解放しポケモン研究所周辺の豊かな木々の方角を睨む。



その表情はいつもの柔和そうなものと違って厳しく、冷たい。



いつものクレインとは全然違う表情に、リュウトは知れず息を呑んだ。



「……リュウト君。急いで所内に戻るんだ」

クレインの声が固い。

「一体……何が起こったんですか?」

クレインの誤算は、リュウトがシャドーと関わることで度胸がついていたこと。


だから突発的な事態にも冷静でいられた。


だがそのせいで、リュウトはこの場から動かなかった。


そして、リュウトはシャドーと関わってはいたが社会の暗い部分を見せないようにしてきた。




「リュウト君」




突然、リュウトの視界が白に覆われた。




クレインの白衣だということを理解するのに時間がかかってしまった。

慌ててリュウトが白衣をずりおろし、クレインを探す。





……いた。



だが何故か、クレインの周囲に見覚えのある戦闘服を着た男達が転がっている。


「シャドー、戦闘員……?」

だがなぜ、シャドー戦闘員がクレインの周りで倒れているのだろう。


流石の事態にリュウトの思考も追いつかない。


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