風吹きぬける大地W
□いつもと違うのは
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夜とは暗いものだ。
砂漠の夜ともなれば冷えるし、明かりはひとつとして無い。
幼い頃から過酷な状況下で育ってきたレオにとって、他の地方というものはどうしても慣れない。
この騒ぎも、だ。
「ねえレオ、お祭りだって!」
「……そうだな」
レオは頭を押さえ、少しだけ顔を顰める。
「……大丈夫?」
「……問題ない。このくらいならな」
「そう?」
『でもどうしたんだ? レオ、人混み苦手だろ?』
「気分だ。それに、俺も苦手だからってずっと引き籠ってはいられないからな」
『……確かにね』
「そこ、納得するな」
手持ちのエーフィを軽く睨む。
『だってレオ、用が無ければずっと室内で本読んでるじゃない』
「そうよそうよ! 一緒に出掛けようって言ってもディアとニュイに任せちゃうしさ! 私と本、どっちが大事なのよ!」
「本」
レオは迷わず、きっぱりと即答した。
『うっわ〜』
「本は何度か読めば飽きるが、ミレイは飽きない。だから本はさっさと読み終わるし、すぐに面白くなくなる。……だがミレイは、本当に飽きないし、楽しい」
「……えっと、私といると飽きない? でも楽しいって……? うーん……からかわれてる?」
「ご勝手に」
レオが微かに笑みを浮かべているのを見て、ミレイは頬を膨らませた。
「やっぱりからかってるんじゃん!」
「褒めてるつもりなんだがな」
『……うーん、要はミレイといると楽しいってことだろ』
『それに、どこにいても守れるって自信があるからあっさりと放任。反対に本はいつ無くなってもいいからさっさと読んでおく……ってところかしら』
流石長い付き合いなだけあり、レオの考えをよく読んでいる。
「ええっと……?」
だが余計ミレイは混乱したらしい。
「……とりあえず、レオは私のことを守ってくれるのね?」
「……シャドーは潰しただろうが」
「いーのいーの!」
ミレイがレオの腕に抱きついて来た。
「ったく……」
「よしレオ! 屋台に突入よ!」
「するなら勝手にして勝手に玉砕するんだな。俺は高みの見物をさせてもらう」
「何でよ! ほら、レオもゴー!」
強引にミレイはレオの腕を引っ張り、町の中に入って行った。
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