仮想と現実U
□叫び
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ずきずきと痛む体を引きずり、青年はまるで幽鬼のようにフィールドをさ迷う。
違う、痛むのは体じゃない。
おぼつかない足取り、虚ろな目。
明らかに尋常じゃない。誰もが声をかけるのを躊躇うだろう。
そのとき、ふと青年の目に留まるものがあった。
まだ低いレベルの呪療士が襲われている。
用意されたハリボテの敵に、ではない。
同じように遊んでいるはずのPCに、だ。
PK。
その行為を見て、青年は口角を吊り上げる。
だが目はまるで笑っていない。
なのに笑っている。
アンバランスな表情。
予め入力された表現ではここまで不気味にはならない。
殺気さえ漂わせている彼は、突如として武器を構えた。
手の甲に装着された、収納可能な抜き身の刃。
パタ、もしくはジャマダハルと呼ばれる武器。
もうR:2には存在しないタイプの武器を青年は構える。
それから、
「ちゅ、ば♪」
PKの場に乱入した。