仮想と現実U
□人と獣
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三崎亮は昔から演じ分けが上手な子供だった。
学校や親の前では「成績が良く、社交性のある子供」という面を被り、内に潜めた凶暴性を『The World』というネットゲームで発散した。
そんなことをまるで他人事のように亮は……“ハセヲ”は思い出し、ぼんやりと“ソレ”を見る。
ハセヲは今、地面に倒れていた。
「ぐおおおおぉぉぉぉぉおおおおお!!」
まるで獣のような雄叫びが響く。
BGMさえ耳に入らない状態で、その声だけがやけに明瞭だった。
すでに倦怠感は限界を超えている。
ログインしてもログアウトしても気分が優れない。
希薄していく意識。
まるで自分がここにいないかのような感覚。
心にぽっかりと穴が開いたようで、何をしても満たされない。
喪っていくのは感情。
それとは正反対に目の前の存在はますます実体化していく。
“ハセヲ”の……三崎亮の狂気が『The World』という世界で形を得、実体化した存在。
それは奇しくもハセヲと良く似た姿を取った。
3rdフォームよりもさらに禍々しく、全身を凶器で包んだかのようなフォーム。
ビーストフォーム
“ハセヲ”……三崎亮という存在がこの獣に喰われていく。
このフィールドに1人で来て良かった。
こんな光景、他の奴らには見せられない。