仮想と現実U
□変わらない関係
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Δ拒絶する 忘却の 呪療士
以前とよく似たエリアワールド。
そのせいか風景もどことなく以前と似ているような気がした。
もちろんそれは気のせいなのだろうけれど。
何気なくハセヲはこのフィールドにいた。
ハセヲにしては珍しく、レベル上げをせずにただ丘の上で佇むだけ。
データドレインを受け、レベルが1まで戻った。
全てが初期化されても、記憶までは初期化できない。
忘却を拒み、あの呪療士が戻ってくるのを待ち望んでいる。
「……誰かを待ってるの?」
ハセヲの背後から1人のPCが声をかけてきた。
名前は……司。
驚愕を顔に出すことはなかったが、平静を取り戻すのに数瞬かかった。
「……何だよ」
以前と同型PCである司が、ハセヲの横に立つ。
「ずっとここにいるから、誰かを待ってるのかなって」
「……関係ないだろ」
「関係ないよ。だから独り言だと思って聞いてればいい」
ハセヲの態度など気にせず、司は続ける。
「僕もね、人を待ってるんだ。でも、まだ来ない」
「すっぽかされたんじゃないのw」
「そんな事ないよ。ただ、僕が早く着すぎただけ。……君の待ち人は来るの?」
来るわけがない。
あの人は今も意識を失っているのだから。
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