仮想と現実U

□休まる場所
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死の恐怖ハセヲ。

PK100人斬りを達成したプレイヤー。


その噂は望まない来訪者も招き寄せる。




今回の客もその1人。




「……ハア」

「何だ?その溜め息は」

「さあな」

死の恐怖ハセヲと赤い稲妻クリムが晴れの草原フィールドで、隣同士で横になっている。


とても珍しい光景だった。


そもそもソロプレイのハセヲがクリムを寄せ付けるだろうか?


もちろんハセヲはこのフィールドに人がいないのを確認済みだ。



つい先ほどまで繰り広げられていた戦闘の熱はすでに冷め、今はこうして休んでいる。


そういえば落ち着いて空を見上げたのはいつ以来だろうか。


「碧以来だ」

ぽつりとハセヲが呟く。

「あん?」

「引き分けたの、テメーで2人目」

「そっか」

どこかクリムは嬉しそうだ。

「碧って、あの殴られ屋のか?そーいや最近噂聞かないな」

以前は仕事をしている時よくBBSに書き込みをしていたのにそれすらない。

「消えたよ、アイツ」

「は?」

「データの海に還った」

M2Dでクリムを横目に見ながら、CC社のコンピューターにハッキングする。

そしてクリムとの会話ログを消していった。

「……そっか」

おぼろげに察し、クリムはそれ以上追究を止めた。



会うつもりはなかった。



だけど有名になればクリムだけでなく他の友に知られるのは必至。


そして“ハセヲ”の名前の意味も。


もちろん知ってる人は知ってるだろうが、誰もわざわざ調べようとはしないだろう。



そして接触してくるだろうということも予想していた。



だが、予想していたとはいえ会いたくなかったのは事実。




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