救済と撲滅

□別れの前の出会い
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何が起こったか分からなかった。

「え……?」

キリエが気付いた時、そこには廃墟しかなかった。


キリエがいた村、バルニ。


どれくらい気を失っていたか分からないが、つい先ほどまで人が住んでいた村なのだ。


なのに、今生きている人間はキリエのみ。


獣人も誰1人、生き残っていなかった。

「な、何が起こったの……?」

自分の身に起こった事が理解できない。

所々に倒れているのは石像……いや、元人間か獣人。

あちこちが砕けているが、まだ原型を留めていた。


だから、キリエにも分かってしまった。


「そ、そんな……!」

小さな村だ。

村の住人全員と知り合いのため、その石像が誰かすぐ分かってしまった。


その中でも一際小さな石像が目を引いた。

「ジネット……」

獣人の少女は人見知りで、でもキリエには懐いてくれていた。

その少女が石像となり、横たわっている。

「どうしてこんな……!何が起こったの!?」


どうして自分だけが生き残ったのか。

何があったのか。



何も分からない。



とにかくキリエはここを離れたくて、ろくな荷物も持たずにバルニ村跡から逃げるように立ち去った。









砂漠に出てから3日。

体力も限界だった。

そこに現れたのが凶暴そうな獣人。

銃をつきつけられ、キリエは抵抗できないでいた。

へたりこむキリエの背中には大きめの岩が。

おかげで背中から狙撃される、という事態にはなっていないが、この状況の打開策にはならない。

「とうとう追い詰めたぞ!」

1人だけ服装の違う獣人が声高々に言う。

「さあ、神妙にお縄に……!」



そこに飛び込んできたのは1人の少女。


「な、何だお前は!」

少女は手にした大剣を振るって獣人を斬り、キリエを助けたのだった。




それが、キリエとモルテの出会い。






その先に別れが待ち受けているとは、まだ考えもしなかった。









END
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