風吹き抜ける大地X

□破壊される世界で
1ページ/3ページ




ミレイがとても深刻な顔で、レオを見上げる。

こういう時は大抵碌でもないことが待ち受けているのだが、残念ながらレオに拒否権はない。


……絶対にミレイには言わないが。


「……ねえレオ」

「……何だ」

渋面のレオにミレイは目を潤ませる。


一体どんな厄介事を持ち込んだのかと、レオは静かに身構えた。




例えば宝物を落とした、だとか。バッグを失くした、だとか。

たまたま拾ったブツがドラッグだった、なんてのもミレイなら在り得るかもしれない。



「……人を、拾っちゃった」

「……は?」



しかし、内容はレオの予想外にいってしまった。
















ミレイが今日寝るはずのベッドには、1人の男が寝かされていた。

「……ディア。ニュイ」

重火器の仕入れのためミレイと離れていたレオは、ミレイは2匹に任せていたはず。


だというのに、何故こんなことになってしまったのか。


『だって、この人突然現れたのよ』

『テレポートみたいだった。でも本人は意識失ってるし……』

「放っておけるわけないじゃん」

3者の言い分に、レオは嘆息。


既にここに連れてきてしまった以上、放置するわけにもいかない。



外見は27歳前後。身長は180くらいか。鍛え抜かれた肉体は魅せるものではなく、明らかに戦闘に就く者だ。


「持ち物は」

『これよ』

ベッドの傍らに、この世界では持つことのない物騒な武器が置かれていた。

「双剣、か」

『武器はそれくらいしかなかったわ』

ディアの技“見破る”でも、武器はそれ以外見つけられなかったのだろう。



しかし。




「……これは」

白衣の下から探り出したのは、金と銀。2つの懐中時計。

「綺麗な時計……」

「……ただの時計なものか。これは……」


強力な、精霊の力を帯びた呪具。


そんなものを2つも所持している。


「………」

色々と厄介が起こりそうだ予感がしながらも、レオは持ち前の知的好奇心を押さえることが出来なかった。



男の額に触れ、目を閉じる。



『ちょっ、レオ!』

『お、おい!』



2人の声も、レオには届かない。



そのまま、数十秒。



「……成程」


そう呟いて、レオは上唇を舐めた。

「……もう」

そんなレオにミレイは安堵の息を吐く。

『……それでレオ。この人どうするの』



普段なら口封じをしているところ。

しかし、この男は未だ目を覚ましていない。



「……そう、だな」



今ならまだ、間に合う。



だとすれば、事態は一刻を争う。



「……支度しろ」

「レオ、それって……」



「慈悲を、くれてやる」



そう、レオは宣言したのだった。













.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ