風吹き抜ける大地X
□破壊される世界で
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ミレイがとても深刻な顔で、レオを見上げる。
こういう時は大抵碌でもないことが待ち受けているのだが、残念ながらレオに拒否権はない。
……絶対にミレイには言わないが。
「……ねえレオ」
「……何だ」
渋面のレオにミレイは目を潤ませる。
一体どんな厄介事を持ち込んだのかと、レオは静かに身構えた。
例えば宝物を落とした、だとか。バッグを失くした、だとか。
たまたま拾ったブツがドラッグだった、なんてのもミレイなら在り得るかもしれない。
「……人を、拾っちゃった」
「……は?」
しかし、内容はレオの予想外にいってしまった。
ミレイが今日寝るはずのベッドには、1人の男が寝かされていた。
「……ディア。ニュイ」
重火器の仕入れのためミレイと離れていたレオは、ミレイは2匹に任せていたはず。
だというのに、何故こんなことになってしまったのか。
『だって、この人突然現れたのよ』
『テレポートみたいだった。でも本人は意識失ってるし……』
「放っておけるわけないじゃん」
3者の言い分に、レオは嘆息。
既にここに連れてきてしまった以上、放置するわけにもいかない。
外見は27歳前後。身長は180くらいか。鍛え抜かれた肉体は魅せるものではなく、明らかに戦闘に就く者だ。
「持ち物は」
『これよ』
ベッドの傍らに、この世界では持つことのない物騒な武器が置かれていた。
「双剣、か」
『武器はそれくらいしかなかったわ』
ディアの技“見破る”でも、武器はそれ以外見つけられなかったのだろう。
しかし。
「……これは」
白衣の下から探り出したのは、金と銀。2つの懐中時計。
「綺麗な時計……」
「……ただの時計なものか。これは……」
強力な、精霊の力を帯びた呪具。
そんなものを2つも所持している。
「………」
色々と厄介が起こりそうだ予感がしながらも、レオは持ち前の知的好奇心を押さえることが出来なかった。
男の額に触れ、目を閉じる。
『ちょっ、レオ!』
『お、おい!』
2人の声も、レオには届かない。
そのまま、数十秒。
「……成程」
そう呟いて、レオは上唇を舐めた。
「……もう」
そんなレオにミレイは安堵の息を吐く。
『……それでレオ。この人どうするの』
普段なら口封じをしているところ。
しかし、この男は未だ目を覚ましていない。
「……そう、だな」
今ならまだ、間に合う。
だとすれば、事態は一刻を争う。
「……支度しろ」
「レオ、それって……」
「慈悲を、くれてやる」
そう、レオは宣言したのだった。
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