風吹き抜ける大地X
□招かれざる来訪者
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何と言うか、作為しか働いていないとルークはつくづく感じた。
「砂漠での行方不明者は毎年一定数います。砂嵐で道を見失ったり、単純に魔物に襲われたり、原因は似たり寄ったりですがね」
ジェイドは淡々と言う。
「最も被害が多いのは矢張りサンドワームですわね」
「ええ、あれは移動して、巣を張って人を引きずり込むわ」
「討伐隊を編成しても被害が増える一方だったからなぁ」
「でも、今回は違うんですよね〜?」
「忽然と人が消える、という話だが……」
「……っていうか、この面子で集まる率高すぎじゃねえか」
例によっていつもの面子。マルクトの大佐ジェイドに貴族のガイ。ローレライ教団神託の盾騎士団のティアに導師守護役アニス。そしてキムラスカ王女のナタリアと、この度婚約が発表されたアッシュ。そしてルーク。
本来なら気軽に会いに行ける立場ではないはずなのに、その垣根を越えて事あるごとに集まっているのは何故だろう。
「仕方ありませんわ。この事件が中立地帯であるケセドニアの近郊だから、両国から人を派遣しなければいけませんし、中立を保つためローレライ教団から監査役を派遣するのも当然ですわ」
「だからって、何で俺たちなんだよ……」
「何せ、行方不明の原因も不明ですからね。下手に派遣し、犠牲を増やすわけにもいきません」
「というのは建前で、やっぱり陛下が気を使ってくれてるんだろうなぁ」
ガイの苦笑に、アッシュも深々と頷いた。
「叔父上も、余計なことしやがって……」
「とにかく、この事件を一刻も早く解決するべきですわ」
「そうだよね。こんなに行方不明者が出るなんて、いくらなんでもおかしいし」
ケセドニア周辺での失踪事件。
それを解決するためにルークたちは集まった。
「お待たせいたしました」
アスターが、相変わらずの笑みを浮かべて入室する。
「こちらが行方不明事件の資料です。分かる範囲で、ですけどね……イッヒッヒッ」
「……こうして見ると、大分地域が限定されてますね」
「同行者は無事という事例もあるんですね」
「これなんか、隣にいた人がいつの間にかいなくなったみたいだな」
「一体何が……」
「……やっぱ、実際に行ってみないと分かんないのかなぁ……ハァ」
大袈裟に、アニスが息を吐いた。
「緑色の光って……何かの譜術かしら」
「あー譜術の失敗ってやつ? 在り得るね」
「この、不審者って何だ」
「ハァ、最初は新生神託の盾騎士団の残党かと思ったらしいんですが……何と言うか騎士の恰好ではなかったらしくて、少なくとも旅人のようではなかったようです。……とはいえ、目撃した人も遠目でよくは分からなかったらしいんですが」
「……まあ、心には留めておきましょうか。もしかしたら関係があるかもしれませんし」
ジェイドはそう言い資料をアスターに返却した。
シェリダンのアルビオールを借り、ルークたちはあっという間に問題の地点にやって来た。
「幻でも見たのかしら」
そうティアが首を傾げる。
「ですが、そのような報告はありませんでした」
「すぐ傍の人が何も見ていないし、無事というのもおかしいだろ」
アッシュが不満そうに腕を組む。
「ノエルは念のため、上空で待機していてください」
「分かりました」
ジェイドの指示にノエルは頷き、アルビオールに戻る。
そして上空へ舞い上がり、旋回をした。
「よし、行こう」
ごくり、とルークは唾を飲み込んだ。
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