風吹き抜ける大地X

□温泉の悲劇
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導き温泉。


それはテセアラのとある孤島にある教会に併設された温泉。


暫く改装されていたが、この度ようやくリニューアルオープンされたのだ。


しかし、それを見てしいなが一言。


「……なあ、ここって改装前は男湯と女湯が分かれてたよな?」

「お、言われてみれば! これは混浴かっ!」

白々しい。



海を臨む、壮大な景色の露天風呂。崖上から源泉が流れ落ち、水しぶきの音が響いている。



しかし問題は、湯船がたったひとつしかないということ。



「……冗談じゃないよっ! 入るんだったらあんたたちだけで入んな!」

腹を立てたしいなを筆頭に、女性陣が出て行った。まあ、それも当然だろう。

「ちぇっ、つまんねーなぁ……」

「何でもいいからさ、風呂入っていこうぜ!」

ロイドは異性よりも温泉の方に興味深々らしい。

対し、ゼロスは煩悩が見て取れる。



そのことにレオは嘆息した。


















タオルはマーテル教会で貸出を行っていた。

「ひゃー、気持ちいいなぁ!」

ロイドがのびのびとお湯につかる。

「しいなたちも入ればよかったのだが……」

「そうか、次は女同士で入れてやればいいんだよ」

「そうだね、そうしたら姉さんたち安心して入れるね」

「ふっふっふっ。まったくだなぁ」

ジーニアスの提案に、ゼロスは何やら意味深な笑い。

「……碌でもないな」


珍しくレオも肌を顕わにし、湯につかっていた。



あの世界では目立つレオの傷痕も、ここではそこまで気にならない。

ロイドや、ジーニアスにも多からず少なからず傷の痕がある。



それでも、レオの傷の多さは異常だろう。



「しかしお前ら……よくもまあ、のんびり出来るもんだな」

「だって気持ちいいだろ?」

間の抜けたロイドの返答に、レオは息を吐いた。

「……効能は認めるが、単純に武器がないのが落ち着かない」


ナイフ1本すら身に着けられないこの頼りなさ。

無論その気になれば手元に呼び出せないわけではない。



だがそれでも、手元にあるとないとでは全然違う。



「……相変わらず物騒だねぇ」

そんなレオに、何故かゼロスは憐みの目。

「……フン」


神子として立場の確立されているゼロスを暗殺しようとする不届き者はそういないだろう。

リーガルはそもそも徒手空拳。武器を必要としない。


「物騒で結構」

この性分は直しようがないらしい。










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