風吹き抜ける大地X

□馬鹿と天才は紙一重
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元々レッドは、体を動かすことが好きだ。


両親が健在だった頃はよく服を泥だらけにしていたものである。

しかし親元を離れざるを得なくなりマサラに住むようになってからは、それを控えることになってしまった。


幼少期から何の疑問も抱かずにしていたことだが、本来なら異端とされることも知っている。



だから、今まで堂々としていた運動が出来ないことはとてもストレスが溜まること。




そんなストレスを発散する場に、ポケモンバトルが向けられるのは当然といえた。

幸いにもレッドは、1体だけポケモンを持っていた。



兄に助けてもらい、ゲットしたニョロモ。



そのニョロモもまた、同じ場所で鍛えた同士。普通のニョロモよりも強い。

あっという間にレッドは、大人顔負けのポケモンバトルをするトレーナーとなった。



戦う者、と呼ばれるようになったのも当然かもしれない。






レッドの頭の中は基本的にバトルのことしかないのだから。





















ある日、アポなしに訪れたブルーはしみじみと呟いた。

「アンタって本っ当、バトル馬鹿よね」

「そ、そうかな……?」

「そうに決まってるでしょ」

溜め息をつき、紅茶を1杯。

「シロガネ山から帰ってきたかと思えば、すぐどっか行っちゃうし。そんなにバトル三昧だと、あの子にも愛想尽かされちゃうわよ」

「なっ、何でそこでイエローが出てくるんだよ」

「あら〜、私は一言もイエローだとは言ってないわよ」

「ぐっ……」

顔を真っ赤に染め、言葉に詰まるレッド。それにブルーはニヤニヤ笑い。

「イ、イエローのことはともかく」

咳払いをし、レッドは軌道修正を図った。

「俺がバトル馬鹿で何が悪いんだよ」

「……アンタ」

溜め息をつきそうになって、ブルーは紅茶を飲んだ。

「……あら、美味し。レッドのくせにいい紅茶使ってるんじゃないの」

「あ、それ貰い物」

「誰から?」

椅子ごとレッドへと、僅かだが迫る。

「えーっと……」

回答に困る質問に、レッドの眼が泳いだ。

「知り合いの、知り合い。お金持ちのおぼっちゃんで、余ってるって言ってたから貰ってきたって、そのお裾分け」

「何その人」

お坊ちゃん、と聞いてブルーの目の色が変わった。

「言っとくけど、紹介しないからね」

「あら、残念」

まさか、異世界の人とも言えない。

「……で、よ」

紹介は諦めたらしく、ブルーはレッドを睨みつけた。

「アンタ、挑戦状貰ったら場所がどこでも相手が誰でも戦いに行っちゃうでしょ」

「うん、この前はシバと戦いにコガネまで行ってきたけど」

「誰も聞いてないわよ。しかもシバって……」

嫌な記憶がブルーの中で蘇る。



四天王シバ。

今でこそポケモン協会の正式な要請で動いているが、かつてはレッドたちと敵対していた。


まあ、本人は決して悪い人物ではないことは分かってはいるのだが……複雑なものがある。



「結構楽しかったぜ」

「だから聞いてないって。……そういうところがバトル馬鹿なのよ」

「そう言われても、なぁ……」

レッドとしてはそれが平常運転なのだが。

「……そういえば、」

「何よ」

「昔から、言われてるんだ。頭がイカれてるって」

「……それ、褒め言葉じゃないわよね」

「俺にとっては褒め言葉なの」

憮然とし、レッドは紅茶を飲んだ。












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