風吹き抜ける大地X
□2人なら
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「そろそろ、孫の顔が見たいのう」
ローガンがそんなことを言い出したのは、晴天の昼下がりだった。
その言葉に思わずミレイはグラスを落としてしまう。
落とした先がテーブルで、且つ中身もほとんど残ってなかったのが幸いだ。
「お、お、お、お祖父ちゃん……えっと……」
顔を真っ赤にし、口をコイキングみたくパクパクさせているミレイ。
対しレオはミレイのような失態は見せなかったものの、視線が宙を彷徨っている。
「ああ、ワシは安心しとるからな。レオ君はオーレ地方では珍しい貞操観念を持っとるとな。でなければ、可愛い孫娘を預けたりせんよ」
「お、お祖父ちゃん!」
「……わざわざ呼びつけて、要件はそれだけか?」
いつもより、レオの口調が乱暴に聞こえる。
レオが、苛立っている。
「ないなら、失礼する」
これまた少々乱暴に椅子を引き、レオはローガン宅を出て行った。
「ちょ、レオ!? ……もう、お祖父ちゃんもからかわないでよ!」
慌ててミレイは後を追いかけた。
「……冗談じゃないんだがのう」
「早すぎですよ」
ローガンの呟きに、セツマが朗らかに返した。
すぐに後を追ったのに、レオの姿は見えない。
多分裏の崖を降りたのだろう。
もちろんミレイはそんな真似が出来ないので、地道に遠回りをする。
アゲトビレッジで、レオが1人になるときに行く場所は一か所しかない。
あの祠だ。
『ミレイー、どうしたんだ?』
『レオもさっさと行っちゃうし……』
「ごめん後! 2人はそのまま日向ぼっこしてて!」
家の側で太陽の光を浴びていた2匹が顔を上げる。
しかしミレイの表情は切羽詰まっていたものの、事件が起こったわけではなさそうだったのでその言葉に甘えることにした。
『きっと喧嘩ね』
『だな。さっさと仲直りしてくれればいいんだけど』
『痴話喧嘩はダストダスも食べないものね』
2匹はそう嘆息し、また微睡に戻る。
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