風吹き抜ける大地X

□これが記念日
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「ねえレオ。今日は何の日だと思う?」

ミレイにそう訊かれたのは、フェナスシティのポケモンセンターでのことだった。


突然何を。


そんな視線を向けて、レオは紅茶を一口。


「……さあ」

「もう」

ミレイは頬を膨らませる。


どうでもいいが、もう20代半ばになろうという成人女性がやっていい仕草なのだろうか。


「今日は、私たちが出会って丁度10年目なのよ!」


「……そうか」

「反応薄っ」

しかし、ミレイの方もレオが素っ気ない態度しか見せないだろうということは分かっていたらしい。

「それがどうしたんだ? 要はお前が誘拐されてから10年ってことだろ?」

「それを言わないでよ」

笑いながら言うレオ。



そんなレオに、ミレイも微笑む。




出会った当初と比べ、レオの表情は大分柔らかくなった。

こんな微笑みも、昔では想像できないくらい。




「……10年ってことは、お前ももうすぐ三十路か」

「失礼ね! まだまだよ! それに、そんなこと言ったらレオだってそうじゃない!」

「俺はいいんだよ。若く見えるから」

「狡い! 私だって……!」

「お前の場合は若く見える、じゃなくて幼い、の間違いじゃないか」

「うっさいわね」

唇を尖らせる。


「……ミレイは、変わらないな」

「……レオは、変わったね」


2人の口から言葉が零れる。


視線が、交差する。



真摯に。どこか熱を持って。




「ミレイ」



レオがたった一言。

名前を呼ぶまでどれ程の間があったか。




「行くか」

「うん」



ミレイに、断る理由はなかった。

















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