風吹き抜ける大地U
□コンテスト前は……
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「え〜!? 部屋空いてないの!?」
ミレイがそんな叫びを聞いたのは偶然だった。
見ればポケモンセンターのカウンターで見覚えのある3人組のうち1人が叫んでいる。
『あら、あれって……』
ディアがカウンターの方を見る。
「ごめんなさいね。……あ、でもこの6人部屋には2人しか入ってないから……相部屋でいいなら……」
「……仕方ないな」
旅をしている以上野宿は仕方ないとはいえ、せっかく宿のベッドで寝れると思っていたのにこれでは溜め息をつきたくなるだろう。
しかもこの街ではもうすぐコンテストが行われるということでポケモンセンターはもちろん宿屋の部屋は満室に近いだろう。
その中で6人部屋に入っている2人。
もしかしてと思い、ミレイは顔を覗かせた。
「あれ? サトシたち?」
「あ、ミレイ!」
すぐに顔を輝かせたのはヒカリだった。
「あ、丁度良かった!」
ジョーイが手を打つ。
「相部屋、頼まれてくれないかしら?」
断る理由はなかった。
「……なるほどな」
レオはサトシたちを一瞥した。
「ジョーイの意向だからな、仕方ない」
他に部屋がなかったからレオたちも6人部屋を借りざるを得なかったのだ、運がなかったと思うしかない。
「それよりミレイ、終わったのか?」
「あ、うん! ほら!」
ミレイが買い物の成果をレオに渡す。
「……少し出る。夕食までには戻る」
「え、ちょっと!」
「ディア、ニュイ。行くぞ」
伏せていたニュイも立ち上がった。
「あっ……」
呼び止めようとしたサトシも声も聞こえない振りをした。
「……どうかしたのか?」
タケシが首を傾げる。
「ああ、気にしないで。あいつ、いつも無愛想だから」
ミレイは乾いた笑いを漏らすしかなかった。