満月の夜に

□もしも世界が……3
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初対面が初対面だったせいか、ギルバは人を寄せ付けない雰囲気を持っている。

だがグルーがギルバを家に招待して分かったこと。


(……こいつ、手馴れてる)


ティキとネスティを表面上では鬱陶しそうにしているが、ネスティの頬についたドリアを拭っている手つきは優しい。

「おーいジェシカ、お替り持ってこいよ!」

対してトニーは3皿目のドリアに突入するようだ。

「ああもうトニー! 今日くらい手伝いなさいよ!」

「いいんだよ、俺もお客様だぜ!」

こちらはいつも通り。

「……トニー」

「……わーったよ」

ギルバに睨まれ、しぶしぶトニーが席を立った。

「おーいチビ姫、運ぶぜ」

「あら、珍しいじゃない」

「たまにはいいだろ?」

そんな光景を物珍しくグルーは見る。

ちらりとギルバに視線を移せば、これまた意外なことに普段とは違って優しそうな目でトニーとジェシカを見守っていた。


今更なことに気付く。


ギルバにだって、家族がいる……あるいはいたはずだ。

あのトニーにだってそれは同じこと。



グルーは、ギルバのことはもちろんとしてトニーのことも詳しく知らないのだ。

それは、過去を詮索しないという流儀のこともある。


だが、グルーとて知りたいことは山ほどあるのだ。

その筆頭に、いつかの依頼で出会ったゾンビや、あの黒い巨大猫のこともある。


答えれば教えてくれるのかもしれないが、何故だかグルーは聞くことができなかった。



知ってしまえば、この関係が壊れてしまいそうだから。



「ギルバ」

「……何だ」

「また招待してやるから、来いよ」

「………」


だから、グルーは次の機会を誘う。


ギルバも、トニー同様息子のように思えてしまったのだから。








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