満月の夜に
□もしも世界が……3
1ページ/3ページ
初対面が初対面だったせいか、ギルバは人を寄せ付けない雰囲気を持っている。
だがグルーがギルバを家に招待して分かったこと。
(……こいつ、手馴れてる)
ティキとネスティを表面上では鬱陶しそうにしているが、ネスティの頬についたドリアを拭っている手つきは優しい。
「おーいジェシカ、お替り持ってこいよ!」
対してトニーは3皿目のドリアに突入するようだ。
「ああもうトニー! 今日くらい手伝いなさいよ!」
「いいんだよ、俺もお客様だぜ!」
こちらはいつも通り。
「……トニー」
「……わーったよ」
ギルバに睨まれ、しぶしぶトニーが席を立った。
「おーいチビ姫、運ぶぜ」
「あら、珍しいじゃない」
「たまにはいいだろ?」
そんな光景を物珍しくグルーは見る。
ちらりとギルバに視線を移せば、これまた意外なことに普段とは違って優しそうな目でトニーとジェシカを見守っていた。
今更なことに気付く。
ギルバにだって、家族がいる……あるいはいたはずだ。
あのトニーにだってそれは同じこと。
グルーは、ギルバのことはもちろんとしてトニーのことも詳しく知らないのだ。
それは、過去を詮索しないという流儀のこともある。
だが、グルーとて知りたいことは山ほどあるのだ。
その筆頭に、いつかの依頼で出会ったゾンビや、あの黒い巨大猫のこともある。
答えれば教えてくれるのかもしれないが、何故だかグルーは聞くことができなかった。
知ってしまえば、この関係が壊れてしまいそうだから。
「ギルバ」
「……何だ」
「また招待してやるから、来いよ」
「………」
だから、グルーは次の機会を誘う。
ギルバも、トニー同様息子のように思えてしまったのだから。
.