満月の夜に
□こんな叔父付き合いきれません
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こんな腕、見せられない。
包帯の下に隠した右腕を抱え、ネロは自宅に戻った。
「遅かったな」
とたん、声をかけられる。
それまで、家に侵入者がいることに気付かなかった。
自分の迂闊さに舌打ちを鳴らしそうになる。
この家の合鍵を持っているのは幼馴染であるキリエとクレド、そしてもう1人。
だが2人共今は教団本部にいるはずだ。
選択肢は自然と絞られる。
「……突然、どうしたんだよ。父さん」
合鍵を使って家で待っていたらしい父、バージルは読んでいた本を閉じた。
父親の存在を知ったのはつい最近。
ただネロを気遣ってか、ときたま会いに来る程度。まだ互いの距離がつかめていないのだ。
だが僅かな時間でもこの父が自らも……もしかするとクレドよりも強いということを知ったし、様々なことを教えてくれた。
父親がいるとキリエに言ったら手放しに喜んでくれ、一緒に暮らさなくていいのかと聞かれてしまった。
だが、ネロはフォルトゥナに留まり続けたし父も何も言わない。
ここには守るべき人、キリエがいるからだ。
だからネロは今日もクレドの命令で任務に行く。
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