満月の夜に

□追憶
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指先でくるくると黒鍵の名を冠す銃を回す。

「もうダンテ! 人の話聞いてるの!?」

治安の悪い場所に店を構えているにも関わらず入り浸っている少女を見て、ダンテは溜息をついた。

「今忙しいんだ。後にしてくれ」

「嘘! さっきからずっと銃いじってるばっかりじゃない!」

「そうか。そりゃ悪かったな」

誠意というものが感じられない。


バラバラにされていた白鍵を組み立てる。


パティの目には、まるで魔法がかかったかのように銃が出来上がっていくかのように見えた。


「……それ、楽しいの?」

不思議そうにパティが首を傾げる。

「楽しい……というよりも、義務、だな」

「ギム?」

「……っと、御嬢さんにはまだ早かったな」

「またR指定なの!?」


「おーいダンテ!」


タイミングが良いのか悪いのか、モリソンが事務所に入ってくる。

「ねえモリソン! ダンテったら酷いのよ!」

「今日もまたご機嫌斜めだな、お姫様。……おーいダンテ」

「こっちは今忙しいんだ」

溜息をついて、エボニーとアイボニーを眼ベルトの中に収めた。


どうやらこれ以上の作業は難しいらしい。


「そう言うなって。今度の仕事はお前好みだと思うが」

「どーだか」

「いや、間違いないって」

モリソンが1枚の紙をダンテに見せる。

「ねえねえ、どんな仕事?」

「そいつぁ言えねえな」

いくらパティでも、簡単に依頼内容を明かすわけにはいかない。


それが危険なら、尚更だ。


「………」

メモをちらりと見たダンテは目を伏せて、立ち上がった。

「……確かに、俺好みの依頼だ」

「だろ?」

「ダンテ、どこ行くの?」

「お前には早い」

「ケチ! ダンテのくせにケチ!」

「ケチで結構」

この分では後をついて来るだろうという予感があったが、それでもダンテはいつものように事務所の扉を蹴破った。









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