風吹き抜ける大地V
□隠れんぼしましょ
1ページ/4ページ
「ねーねー! 隠れんぼしよ!」
マナのそんな言葉にある者は苦笑いし、ある者は無邪気に目を輝かせた。
「マナ。今は忙しいんだから……」
「ん、いいんじゃない?」
娘を窘めようとするリリアを、クレインは制した。
「おい、クレイン……」
「まあ、急ぎの用じゃないし遊んだら?」
マサの抗議の声を遮って、クレインがそんなことを言った。
「所長、ごめんなさい……」
「よし、リュウトも遊ぼう!」
ミレイが頭を下げようとするリュウトの肩を叩く。
「ね、レオ!」
さらに話を振られ、レオは溜め息をつく。
「……隠れんぼ、をか?」
レオはミレイ、リュウト、マナと視線を移していき……渋面を浮かべた。
「……無理だろ」
「無理って何でよ! 隠れんぼくらい出来るに決まってるじゃない! ねえ?」
「ええ、まあ……」
「もっちろーん!」
それでもレオは表情を変えなかった。
「あはは。レオ、勘違いしてるよ」
「勘違い?」
クレインは笑みを浮かべながら、ミレイたちを見た。
「こいつん中じゃルールが違うんだよ」
「隠れる方はどれだけ気配を上手く消して鬼から隠れられるか、鬼はどれだけ敵の気配を探れるかってゲームなんだよ」
笑ってマサがレオの肩を叩く。
「気配って……」
「何ですかそれ……」
ミレイとリュウトが絶句してレオに視線を移す。
「だから、その辺りの心得がない3人じゃ勝負にならないって言ってるのさ」
「だってそうだろうが。見つけられないようにするためにはその程度出来なくてどうする」
真顔で言い返すレオを見て、ミレイも笑いを抑えられなくなる。
「レ、レオ……変なところで天然っていうか……」
考えてみればスナッチ団で隠れんぼをするわけがない。
知らないのも当然なのだろう。
「……レオ、これは子供のお遊び。気配を消さなくていいんだから」
「……そういうものなのか」
どこか釈然としないものを感じながら、レオは納得した。