風吹き抜ける大地V

□ジャックオランタン
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ハロウィンというのは死者の霊や魔女から身を守るためにかぼちゃのランタンを吊るしたのが始まり……らしい。

「トリックオアトリート!」

だが、目の前で仮装をする子供を見ているとそんな起源はどうでも良くなってきた。

「ほら」

溜め息をついて、レオは適当に勝っておいたクッキーをマナ、リュウト、そしてミレイに渡す。

「やったー!」

「ありがとうございます!」

「さっすがレオ! 準備いいわね!」

無邪気に喜ぶ子供とミレイを見て、レオは溜め息をついた。

「……本来、この行事は悪霊を払うためであって、お菓子をたかるものじゃない」

「え、そうなんですか?」

「別にいーじゃん!」

「特にミレイ。仮装は子供の特権だと思ったが?」

「何よ、可愛くない?」


ミレイは魔女の仮装をしていた。

ちなみにリュウトはドラキュラ、マナがカゲボウズの仮装をしている。

大体このイベントは夜が本番のはずで、今はまだ昼間だ。


「……ガキか」

「あー、ひどーい!」

「実際そうだろうが。自分を大人だと思うなら、まずはその仮装をしてイベントに参加するのを止めるんだな」

「レオさ〜、自分がお祭りに乗り気じゃないからってそーいう態度は良くないと思うけど?」

レオは再度溜め息をついて、窓から外を見た。


ここパイラタウンは何故かハロウィン一色に染まっている。


「……ごめんね、レオ。わざわざ付き合せて」

申し訳なさそうに、クレインが謝った。

「全くだ」

「ほら、マナもそれ以上レオさんに迷惑かけないの」

「えー、何でー!?」

マナがリリアに抗議の声を上げる。


レオとミレイがパイラのこのイベントに来た理由はクレインたちにある。

クレインがリュウト、リリア、マナの3人と一緒にこのパーティーに来るということを話したのだ。

それに興味を持ったミレイが駄々をこね……こうなってしまった。


「……大体、俺はこういうイベントが1番苦手なんだ」

嫌いではなく苦手、と言ったとことにリュウトが首を傾げる。

「苦手……なんですか?」

「ああ」

ちらりとレオはクレインを見上げた。

「……そういえば、いないからな」

「まあね。あれでも気を使ってるんだよ?」

クレインが苦笑を浮かべる。

「いないって……何が?」

「もちろん悪霊の類が、だよ」

さらりと言ったクレインの言葉に、リリアもリュウトも呆けてしまった。

「え、研究所に幽霊いるの!?」

だがマナだけが目を輝かせる。

「いないように気をつけてるんだよ。……確かに、こういうイベントだと寄って来るからね……レオは無理して外に出ない方がいいかも」

「言われなくてもそうする。……だが、マサやスレッドには顔を出しとかないとな」

「マサは分かってるでしょ。ハロウィンだったらもっと来ててもおかしくないだろうし……」

「ああ、その辺りマサも心得ているらしいな。お陰で少なくて済んでいる」


「ミレイさん……」

こっそりとリュウトがミレイの服を引っ張った。


「あの、レオさんって……」

「ああ、レオって視えるし憑かれやすい体質なんだって。だからあんまり乗り気じゃないみたい。でも気にしなくていいよ」

「そ、そうなんですか……」

生まれてこのかた10数年、そういったものとは無縁で過ごしてきたリュウトには分からない世界だ。

「……所長が視える方だというのも初耳ですけれど」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「はい。……でも、調度品にやけに気をつけていた理由が分かった気がします」


研究所を建てたとき、クレインはやけに内装
に拘っていた。

それは悪いものを寄せ付けないためだったらしい。


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