風吹き抜ける大地V

□オーレ支部の終わり
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1人夜まで調べ物をしていたクレインが、ようやくパソコンの電源を消した。

「……ふう」

ずっと画面と向かい合って肩が凝ってしまったらしい。手で肩を揉む。

それから眼鏡を外し、瞼を上から揉む。



まだこの研究所に入ってから日が浅い。

若いクレインは人一倍努力しなければならない。


そのクレインの背後から、何者かが忍び寄る。


背後に迫り来る人物に気付くことなくクレインは眼鏡をかけ直し、白衣のボタンを外していく。



そして、艶消しのされた黒いナイフがクレインの首に振り下ろされた。



とたん、視界が白一色に塗りつぶされる。


「!?」


とっさにナイフで白を切り裂く。



それはクレインが脱いだ白衣だった。


「気配の消し方が甘いね」

しかし、クレインはその隙に襲撃者の横に回りこんでいた。

「なっ……!」


ただの研究者がここまでの身のこなしをするとは思っていなかったのだろう。

「ふっ!」


襲撃者の腹部を殴りつける。

軽鎧を着込んでいたらしいが、クレインの衝撃は鎧を突き抜けた。


「ぐっ!」

一撃で襲撃者が昏倒する。

「僕がただの研究者だと思ってたみたいだね」


確かにクレインは武術が得意ではない。


だがそれは、あの村の中での話。


そうでなければ、シャドーへの危険な潜入捜査などしない。


床に倒れる襲撃者からナイフを奪い、毒が塗ってあるのを見て目を細める。


本気で殺す気だ。


「……さて、どうやって言い訳しようかな」

溜め息をついて、とりあえずクレインは襲撃者を縛る縄を探すことにした。







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