仮想と現実V
□ほんの少し、飛躍した
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全世界で1000万人を越すプレイヤーが参加している、多人数が同時に参加することのできるオンラインRPG『The World』。
2022年現在、提供されているのは「R:X」であり、CC社によって運営されている。
2018年に休止となった「R:2」から2年のブランクはできてしまったが、『The World』は再び多くのユーザーにとっての日常となっていた。
文字通り「世界」といえる規模と自由な操作性を提供するこのゲームは、システムとして用意されているクエストやルールだけでなく、プレイヤー達の主体性から生まれた秩序と多種多様な楽しみ方がなされており、新たなコミュニケーションの場として活気づいている。
そう、2022年。
三崎亮も22歳となっていた。
某有名大学に進学して4年。
就職先も決まり、これからは以前ほどログインが出来なくなるだろう。
分かっていたこととはいえ、ようやくクリムの苦労を実体験する年となってしまうということだ。
だが、あの『世界』に行くのを止めるつもりは毛頭ない。
いつもの習慣で、亮はBBSの書き込みを眺める。
「こいつら……」
ギルド『八咫の鏡』の指名手配が目に付いた。
「サクヤ」「トービアス」「メアリ」の3人に高額な懸賞金が懸けられている。
ギルドで挑んだクエスト中にトラップを発動させ、16人ものプレイヤーのHPを0にしたらしい。
「随分と間抜けな……」
発動させた方もさせた方だが、事前の下調べを怠っていたギルドもギルドだ。
「八咫の鏡」はギルド外からもメンバーを募って高難度のクエストやイベント攻略を目的としている冒険者ギルドだ。
確か今回は「ザワン・シン」攻略に挑戦しているはずだ。ハセヲもギルマスのシャムロックから誘われた記憶がある。
「ザワン・シン」が攻略不可能と言われているのはどのヴァージョンでも同じで、ハセヲも「R:2」のときには苦労した。
そもそもハセヲは大人数でパーティを組むような性分でもないし、俄仕込みの連携は苦手だ。
それに他のギルドに協力する義理もないし……何より面倒だ。
「……っつーかこいつら、どうしてこう見たこと型なんだ?」
サクヤはカイトに、トービアスはバルムンクに、メアリはブラックローズと同じ型ということで何故か既視感がある。
そういえばシャムロックはアイナと同じPCだし、その副官であるスミスはぴろし3と同じボディだ。
何か因縁でもあるのだろうか。
溜め息をついて、亮はFMDを頭に装着した。