仮想と現実V
□望まぬ対面
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この『The World』には何かと噂が絶えない。
例えば Δ 隠されし 禁断の 聖域
何のイベントも確認されておらず、どんな意味でCC社が作ったのかも不明。
他にもロストグランドと呼ばれるエリアはいくつか確認されている。
他にも近頃黒い泡のバグや、プレイ中に意識不明になってしまうという噂もある。
もちろん大多数のプレイヤーはただの噂として誰も本気にしない。
だが、それがただの噂ではないと気付いたプレイヤーもいるのだ。
彼らは7年前、やはり『The World』のプレイ中に意識不明となってしまう事件に関わっていたプレイヤーだ。
だから、この噂を耳にしたとたん嫌な予感がしたのかもしれない。
Δ秘匿されし 黄金の 真実
「でもさぁ、こうしてダンジョンに潜ってるだけで未帰還者になるわけじゃないっしょ?」
少し不満そうにミミルが頬を膨らませる。
「仕方ないだろう。文句があるならやめればいい」
「そういうわけじゃないけどさぁ……」
BTのキツいひと言にぶつぶつと呟きながらもミミルが戻る気配はない。
それにベアは苦笑した。
以前はヘルバという協力者がいたが、彼女との連絡手段は2年前に『The World』がR:2となってしまった際に喪われてしまっている。
本当ならこうやって固まって探索するよりもばらけた方が効率がいいのだが、何が起こるか分からない以上離れるのは危険だと判断したため、ここには3パーティ7人が固まっていることになっている。
「CC社、また隠蔽しようとしてるのかな……」
司の表情は暗い。
ネット上に流れた、宮皇エンデュランスと挑戦者ハセヲの対決の写真。
そこに写っていた黒い泡。
それがどういう意味か、7人は知らない。
CC社に問い合わせたところでバグとしか答えないだろう。
7年前にだって、CC社は隠蔽のためにサーバーを閉鎖しようとしたのだから。
「だったら、私たちの手で真実を見つければいいのです」
そんな司に昴が微笑みかける。
「くーっ、昴さまお優しい!」
それに大袈裟な反応するのは銀漢だ。
「なあベア。本当にハセヲは来るのか?」
クリムはそうベアに聞いてみる。
あの黒い泡に囲まれながらも無事だったハセヲには、きっと情報を持っていると判断したからだ。
かつてのツテがあればまた違うのだが、7年も経っているのだ。彼らにもそれぞれの生活がある。
ここにかつてのメンバー8人のうち7人までもが揃ったのだってなかなかないのだ。
残りの1人は来れないと連絡があった。
『はぁ? そんなの僕ちん興味ないもんw』
というメールが帰って来ただけ。
「と思うが……。このエリアを指定したのだってハセヲだからな」
「それがGMの騙りだったら?」
ミミルの質問に、ベアは笑みを浮かべた。
「そのときは、GMから直接聞くだけだ」
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