仮想と現実V
□分かってくれる人
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消えていくPCを楚良はつまらなそうに見下ろす。
「な〜んかつまんにゃーい」
最近PKをしても気分が高揚しない。
リアルに復帰してからだ。
何をしてもつまらない。
いっつもしていたPKだって。
「う〜ん……もっとヤッちゃえば楽しめるかなぁ」
顎に指をあて、ニヤリと笑う。
「それとも、アンタを殺したら楽しいのかなぁ?」
「……相変わらず悪いみたいだな、楚良」
クリムが槍を肩に担いで溜め息をついた。
戦果 引き分け
フィールドに2人、楚良とクリムは寝そべる羽目となった。
「……無駄な労力使っちまったぜ」
「それこっちの台詞」
HPもギリギリで、これ以上戦う気も起きない。
「でも、楽しかったろ?」
「………」
答えるのは不本意のため、楚良は沈黙する。
「つまんないときはいつでも相手してやるからよ、連絡くれよ。俺のメンバーアドレス捨ててないだろ?」
クリムのメンバーアドレスは、楚良が復帰したときに受け取っている。
だが……
「ヤダ」
楚良がクリムを素直に呼び出すわけがない。
「このガキ、少しは素直になりやがれってんだ」
「ガキって言うな!」
残念ながら今の楚良にはクリムに斬りかかるだけの体力も気力もない。