仮想と現実V

□オトモダチ
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頭が痛い。

「ありがとうございました」

7年来の付き合いである主治医に頭を下げ、診察室を出る。


頭痛の原因は分かっている。


「モルガナのおばちゃんめ……」

厄介な置き土産。

だけどアレの力を借りないと今回の件は解決できなかった。



アレになる度に思い出す。


この手で殺してきた人たちのことを。


そのときの手応えを。


苦しくて、嫌で仕方なかった。


でも体はまるで石のように硬くて。


嫌だ嫌だと叫び続けてもその声を聞いてくれる人もいなくて。


仲良くなったあの子もこの手で殺して。


意識さえもだんだん塗りつぶされて、自分が自分でなくなって。


最後にはあの女の子を殺すために、あのオバチャンの言いなりになっていた。



「……チッ」

嫌なことを思い出した。

さっさと帰って遅れた勉強を取り戻さなければならない。


まだ痛む頭を抑え、通いなれた通路を進む。


頭痛がするたびに、オーヴァンのことを思い出す。



まだ事件は終わっていない。


グリーマ・レーヴ大聖堂でPKされたのがその証拠だ。

お陰で数時間意識を失ってしまった。

本当に両親がいなくて良かったと思う。






頭が痛い。






「……黙れ」

小さく呟き、はっとして前を見ると女性とぶつかってしまった。

「……すみません」

「いえ……こっちも前見てなかったから。……えっと、五月蝿かった?」

どうやら独り言を聞かれてしまっていたらしい。

恥ずかしくて俯いてしまう。

「あ、いえ……ちょっと、イラついてて……」

「ふふ」

女性に笑われてしまった。

流石にこの立場で文句は言えないが、それでも気分を害す。


さらに頭痛が酷くなった気がする。


「ねえ君、暇?」

「え、はい……」

どうせ家に帰ったってやることはいつも決まっている。

親も帰ってこない。

「私さ、今友達の診察を待ってるの。良かったら話し相手になってくれない?」


その申し出に亮は呆気に取られてしまった。


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