仮想と現実V

□意外な一面
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いつも通りPKをして、マク・アヌに戻ったまではいい。

楚良は気まぐれを起こして街をうろついたのが間違いだったのだ。


「あひゃあ!」

道の曲がり角から小柄な影が飛び出してくる。

「おっと」

危うくぶつかるところだった。


ぶつかろうとした犯人を見て、楚良は溜め息を隠す。


ガスパーだ。


「ガスパー大丈夫……って、楚良!?」

後からシラバスまでやって来た。


そういえば初心者サポートをしているときに何度かちょっかいを出した記憶がある。

楚良からしてみれば初心者にPKの恐怖を覚えてもらおうという『親切』だったのだが。

もちろん手は出していない。


シラバスとガスパーは電波系のアトリとは違った意味で面倒なのだ。


「あひゃあ……危なかったんだなぁ……」

「もう……だから気をつけてって言ってるのに……。楚良も大丈夫?」

「トーゼンでしょw 僕ちんこんな間抜けじゃないもーん」

「うう……」

何やらしょげていたガスパーだが、急に目を輝かせて顔を上げた。

「そうだあ! ねえシラバス、楚良にやってもらおうよ!」

「そうだね! じゃあ楚良、ギルドショップの店番してよ!」

「……はぁ?」

流石の楚良もこの話題の転換にはついていけなかった。

「これからギルドショップを開く時間なんだけれど、僕もガスパーも急用が入っちゃったんだ! ハセヲはログインしてないし……だから楚良、お願い!」


危なかった。

ハセヲでログインしていたらまた店番を押し付けられるところだった。


だが今は楚良。


「いいけど……お客、減っちゃうよ?」

そう言って楚良は笑った。





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