仮想と現実V

□あり得ないはずの出会い
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『再誕』の発動。

ネットワークのシステムを1度リセットし、AIDAを消滅させようという作戦。


だが、そのせいで反存在となるCubiaを生み出してしまった。



Cubiaが生まれた原因の一端を担っているのだから、尻拭いをするのは当然だ。



だが、その代償として……。



「……ん」

頬を撫でる風が心地よく、ハセヲは瞼を震わせる。

加えてくすぐったい。


もう少しこの微睡に身を任せておきたいところだが、むず痒くて仕方なく目を明けた。


とたんに、大きな目と視線がかちあう。


「……は?」


小さな、緑色の身体をした見たことのないモンスター。

まるで精霊をデフォルメしたかのようだ。


「……ビィ?」

そのモンスターも首を傾げる。


とりあえず攻撃してこないらしい。

でもなければ寝落ちしてしまっていたのにHPが減っていないというのは考えにくい。


「……っつーか、寝落ち?」

目を覚ました、ということは寝てしまっていたのだろう。


Cubiaを倒したときに起きた衝撃で気絶していたのかもしれない。


……さて、ここはどこのフィールドだろう。


マップを表示させようとして……ハセヲはようやくそのことに気付いた。




リアルを認識できない。



思わず頭を抱える。




Cubiaを倒して未帰還者。笑えない状況だ。




しかもここは見たことのないフィールドだ。

一見すると森のフィールドに見えるが、ハセヲの傍には石で出来た祠のようなものがある。

しかも明るく、とてもモンスターが出現するようには見えない。


となると未発見のロストグラウンドだろうか。


「……なあ、ここどこだよ」

目の前に見知らぬモンスターに聞いても答えが返ってくるわけがない。


だが、フィールドならどこかにカオスゲートがあるはずだ。

まずはそこでルートタウンなりネットスラムなりに戻ればいい。


そう判断して立ち上がったところで、ハセヲの耳に足音が届いた。


今ハセヲがいる、石畳の上を歩くような音。



そっとハセヲは腰に下がっている『何か』を掴むような仕草をする。


(いけるか……?)

一瞬だけ不安が過ぎったが、ハセヲの手には確かな手ごたえがあった。


そして手の中に現れたのはXthフォームになったときからの愛用武器、双銃。


「……気配を消さなかったことで、敵対するつもりはないと判断してもらいたいのだが」


石畳の続く洞窟の暗がりから、1人の青年が現れた。


青いコートを着た、顔を横切るように白いラインを入れている青年。


「……お前は?」

「そこにいる奴に、呼び出された」

そう、青年はハセヲの側を飛んでいる緑色のモンスター(仮)を示した。








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