仮想と現実
□ガラじゃないけど
1ページ/4ページ
カールが彼を見つけたとき、人違いかと思った。
同型のPCくらいいてもおかしくない。
だがあの髪型といい頬の傷といい、カールの知っている彼そのもの。
だが雰囲気が違う。
まるで憑き物が落ちたような、すっきりとした顔。
その人物はカールが声を掛けるよりも先にカールに近づいて来た。
「あれ?カールきゅん?」
その呼び方は間違いなくカールの知っている彼……楚良のもの。
自分が入院している間に何があったのか分からない。
カールはリアルで意識不明になり、この前退院したばかりで、The Worldにログインしたもの久しぶりだ。
「楚、良……?」
「他に誰がいるの?もしかしてボケた?」
「ボケてない」
「あっそ」
プイとそっぽを向く楚良。
「……ねぇ楚良」
意を決し、カールが聞こうとする。
「……多分、カールきゅんが考えてること、当たってるよ」
「え?」
「厳密に言えば、僕はカールきゅんの知ってる“楚良”じゃないもん。でも、君をデータドレインしたのも僕」
その告白にカールは戸惑う。
.