仮想と現実
□内密の作戦
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「あなた……何者?」
パイが男を睨む。
「おっしえな〜い。簡単に教えるわけないじゃん」
ふざけた口調。
「それより〜、僕の方こそ今の技教えてほしいな?あれチート?」
それからクーンを見る。
「あ、でもジークかチートするわけないか♪」
「!?」
その言葉にクーンが息を呑む。
「お前……、まさか、知ってたのか?」
楚良は7年前と同じPC。
だがジークはすでに失われ、だから今はクーンとして活動しているのだ。
まさか楚良がジークとクーンが同一人物と知っていたとは。
「モッチロン♪」
「クーン、知ってるの?」
戸惑いながらパイが訊いてくる。
「楚良……。前バージョンから有名なPKだ。ここ最近噂を聞かなくなってたけど……やっぱ活動してたか」
クーンの元に女性から寄せられる悩みの1つにPKの存在がある。
そのPKの中で最も多いのは、楚良という名前のPK。
だがここ数ヶ月、楚良の名前は聞かなくなっていた。
「トーゼン♪ただ控えてただけでね。僕も大人になったってことw」
「説得力ないぞ……。だが、どうして俺がジークだと分かった」
銃剣を構えるクーン。
ジークの時から数え切れないほど挑んでいるが、楚良に勝てたことは1度もない。
楚良と引き分けることができるほどの実力者は、今この場にいない。
「そんなの調べたからに決まってるじゃん♪それに〜ジークとクーンの行動パターンが同じだし〜。あんた、7年経っても変わんないんだね」
「それはお前もだろ」
パイも拳を構え、アトリは杖を握り締めた。
「あなた……何が目的でここにいたの?」
「一般プレイヤーがフツーにプレイしてるのがおかしい?」
「おかしいわね。このエリアは封鎖されているはずよ?」
「今も昔も抜け道はあるものさっ」
明らかに警戒している3人を見て、楚良は笑みを浮かべる。
「ホントは今相手をしてやってもいいけど、いいもの見れたし見逃してあ・げ・るw」
「何ですって?」
「んじゃね〜♪」
それだけ言うと、楚良はどこかへ転送した。
道具を使った気配がないから、チートかもしれない。
八咫からパイに通信が入る。
「……はい。分かりました」
「何だって?」
「八咫様から、すぐに戻るように」
「あいつを放っておいていいのか!?」
「2つあったAIDA反応は両方とも消えた。それに、ここからじゃ楚良がどこに転送されたかも分からないわ」
「……分かったよ」
肩を落とすクーン。
それから、導きの羽を使ってゲートまで3人は転送された。
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