仮想と現実V

□鬱憤
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ふと昔のことに思いを馳せ、亮は自嘲する。

あの頃は本当にガキだった。

戦い方も知らないくせに、体の動くまま、我武者羅に戦っていたのだから。


それでも目立つ怪我をしなかったのは、相手が子供だからと油断してくれていたのと、正確に急所を狙ってすぐに叩きのめしていたから。


それと逃げ足。


ギャラリーが来る前に、警察が駆けつける前に逃げる。そのおかげで補導もされずに済んだ。

補導されたら、あの母親は卒倒するだろう。



ただ『The World:R2』が開始されてから、リアルファイトで戦うことはめっきり減った。



ただ、減っただけでやらなくなったわけではない。



「あーあ、ホント何やってんだろうね、オニーサンたち」


足に力を込めると、下で何かが呻くような声が聞こえた。

「こんなんじゃ、ストレス解消にならないじゃん」

このまま背骨を折ってやろうか、とも考える。

報復だって怖いし。


ただ、今日はこれでタイムオーバー。


帽子を目深に被り直し、最後に脇腹を蹴りつけてからこの場から逃走した。













「ハセヲ、なんだか機嫌よさそうだね」

@ホームにいると、ログインしてきたシラバスがそんなことを言った。

「そうか?」

「何かあったの?」

「何も……ないはずだけど」

「あー! もしかして、宿題がなくて嬉しいんじゃないか?」

ガスパーがそんなことを言いだす。

「なるほど。宿題って面倒だもんね」

「あのなぁ……」

確かに面倒だが、あのくらい簡単ならそんな時間を取らない。

別に家でなくても、学校の休み時間とかにやればいいのだし。



強いて言えば、久しぶりに繁華街に繰り出したことくらいだろうか。



やはりゲームでのPKと、リアルファイトは全然違う。

何より相手を殴り、踏みつけるあの感触。とてもPCでは再現できないもの。



その感触を思い出し、ハセヲは笑みを漏らしそうになった。







「それで、何があったの?」



「ヒミツだ」




END
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