Walker Family
□見送りの約束
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「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてね、アレンくん・・・」
朝9時 街の東側にある小さな駅
私とティッキー、リナリー、マナはある人物の見送りに来ていた
その人物とはアレン・ウォーカー
昨日の晩に届いた指令で、今日から2週間街を離れることになったのだ
急なことなので慌てたらしいが、任務用の荷物はあらかじめまとめてあったらしく、なんとか時間通りに出発することができそうだ
どうやら今回はティッキーは行かないようで、俺もホントは行きたいんだけどね、とか言っていたが、アレは絶対ラッキーとか思ってる顔だ
あとでご飯にタバスコ入れてやろうと思う
ちなみにマナは私に抱きかかえられ、その小さな手を空中で遊ばせている
リナリーはこれから任務へ行くアレンと何かしら言葉を交わし(まあ愛の言葉だろうが・・・)
ティッキーは私の隣でめんどくさそうに突っ立って欠伸をしている。いい加減しっかりしてほしい
でもさ、本当はこういう時ってお母さんであるリナリーが抱っこしてあげるもんでしょ?家族3人で話せるし。でもそうはいかない何故なら・・・
ほら、アレンとリナリーがチラチラこっち気にしてるよ
ティッキーと私&マナは同時に回れ右をした
「リナリー、目つむって?」
「アレンくん・・・んっ////」
しばし流れる無言な時間。後ろでバカップル夫婦が何をしているか考えたくもない
後ろから飛んでくるピンクのハートマークが果てしなくうっとおしい
「ねェティッキー」
「なんだよ」
「これいい加減疲れてきたね」
「耐えろ。俺だって辛い」
程なくして私たちは一斉に振り返った。リナリーが口元を押さえて真っ赤になっているのが猛烈に気になるが、むりやり欠片も気にしないことにした
そうでもしないとやってらんないんだよコノヤロー
まったく、無邪気に私の手で遊んでいるマナが羨ましい
「ロード」
「んっ?」
不意に呼ばれた私の名前
顔を上げるとアレンが私に向かっておいでおいでをしていた
私は目的を察しマナを抱きながらアレンに駆け寄ると、彼は私の頭にその大きな手をポンと置き優しく撫でてくれた
これは彼が任務に行く時の最近の儀式みたいなもので、正直私はこういうのは慣れてなくて恥ずかしいが、そんなに嫌いではない
「ロード、僕がいない間リナリーとマナをお願いね?」
「分かってるよアレン、安心して行ってきてねぇ///」
私はこの時の彼の優しい頬笑みに今だに弱い。やっぱりまだどこかで好きなのかなァ・・・
そんなことを考えていると、彼の手は私の頭から離れ、私の腕に抱かれているマナへと伸び、その小さな頭をより大切そうに優しく撫でた
アレンはこの時はいつも見たことがないような優しい『お父さん』の顔を見せ、マナもとても嬉しそうな顔で撫でられる
「キャハハッvV」
「じゃ、パパお仕事行ってくるから。いい子にしてなよ?」
それはまだ言葉が分からないマナには伝わらない言葉
だが、これがおそらく自分への戒めなのだろう
いい子にしてるなら自分は必ず帰ってくるから、という我が子への小さな約束
彼はこれから戦場へと行くのだ。無事に帰ってこれる保証はない
でも、ここに家族が待っている限り必ず帰ってくると、私は確信している
だから私たちはこうやって笑顔でアレンを見送れるのだ
「おい少年。そろそろ――」
「ああ、はい・・・」
ティッキーの声に名残り惜しそうにマナから手を離すと、列車へと乗り込む
マナはそんなアレンの背中をポカンとした表情で見つめていた
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