さびれた村に明かりがどんどんついていく
小判をばらまく音がなるたんび
次々においらに感謝の言葉をあびせる村人たち
「へへっ、こんなのおいらにとっちゃあ朝飯前でい!」
みんなが幸せならそれでいい
あんな金持ち野郎ども、こんだけとっても困りゃしねえだろ
全部の小判をばらまき終えて、走り去ろうとしたとき
おいらを呼び止める声がした
「ゴエモンさん!」
「ん、?」
ふりかえったら、女の子がひとり。さっきばらまいた小判を両手でかかえていた
「こんなに受けとれないです」
「どうしてだ?」
「だって、わたしゴエモンさんになんにもしてないのに…」
「おいらが勝手にやってることなんだからさ、気にすんなって」
「でも、お礼なんてなんにもできないです…」
「いらねえって、んなもん」
おいらに小判をかえそうとするその両手を押しかえして、女の子のほっぺたをつまんだ
「おいらは、みんなが幸せで笑ってくれたらそれでいいんでい」
「いひゃいれふ」
「だからそんな申し訳なさそうな顔すんのやめい」
ぶんぶん何回も顔を上下にふって、わかったっていう顔をした
そろそろ逃げねえと役人が追ってくるころだ
「んじゃあな、」
「ゴエモンさん!」
「今度はなんでい」
がんばれ!
(おめえみてえなやつがいてくれっから、がんばれるんでい)