短編ゴ

□ありがとう女神さま!
1ページ/1ページ





人魚変化の術で隠密行動をしていたわたしは少し休もうと思って水面に出た



「はあ…つかれた」



術をとくのも面倒だから陸地にひじをつけて手にあごをのせた



ふと視線をそらすと、ひとりの女の子と目があった



女の子はわたしから目をそらさないので何を言っていいのかわからなくなったわたしは、



「…こんにちは」



と言った



女の子は一瞬ぽかんとしたけど、次の瞬間目をキラキラさせてわたしに言った



「こんにちは!あのっ、この池の女神様ですか?」



……………………



「え?」



女神様だなんてとんでもない。わたしはただのくのいちなのに



「すごい!ほんとに女神様がいたなんて!生きててよかった!」



「いや、わたしは女神様なんかじゃなくて…」



「でも、女神様っておばあさんみたいな人かと思ったらこんなに綺麗なお姉さんだったんですね!」


「いや、あの、その、」



「失礼ながら拝ませていただきます!…ナムナム…」



困ったわ



この女の子はわたしのことを完全に女神様だと思い込んでいる



視線を女の子のほうに向けると、ナムナムへーと言いながら踊っていた



…どうしよう



「あの!この池の女神様は、悩み事を聞いてくれてなおかつ悩み事を解決してくれるって聞いたんですけど本当ですか?」



「え、いや…わたしは…」



「そうですよね!女神様に不可能はないですよね!失礼なこと言ってすみませんでした!」



おわびに謝罪のおどりをおどります!と言ってわたしにおどってくれた



この女の子は全然わたしの話を聞いてくれない…わたしのことを女神様だと信じているのね



…………………



少しくらいなら、悩みをきいてあげてもいいかなあ



「あの、もう踊りはいいです」



「あっ、すみませんでした!」



「ところで…あなたには悩み事があるんですか?」



「はい!人には言えないとっても複雑な悩みです!」



「よければ聞きましょうか?」



「本当ですか?ありがとうございます!」














この女の子は、



すごく優しくて、かっこよくて、ちょんまげで、ちっちゃくて、勇気がある男の子に恋をしていて、



でも、その男の子は人間じゃなくて、からくりで、



女の子は自分の気持ちを全部伝えたけどダメだって、



「拙者はからくりだから、拙者を好きになってもきっと辛いでござる」



って言われて、



泣いて泣いて泣いて、



いつのまにかこの池にたどりついて、



女神様のうわさを思い出してずっと祈って待ってた












「…ということなんです」



「そうなんですか…」

(すごく身近な人の予感…)



「でも、わたしはからくりとか全然気にしないし、サスケのこと好きな気持ちだってかわんないのになあ…」



(やっぱりサスケさんだったんだ…!)



「…聞いてます?」



「ええ!聞いてますとも!」



「だからどうしたらいいのかな…と思ってて…」



あんなに明るくて、おどりまくってたこの子がこんなに悩んでたなんてわからなかった



でも、からくりと人間が結びつくことは決して不可能なことじゃないと思う



ふたりが本当に愛し合ってるんだったら…



「なんだか相談したらすっきりしました。本当にありがとうございました」



「きっと」



「……?」



「きっと、その男の子はあなたの事を想ってそう言ったのね」



サスケさんなら大切な人にそう言うでしょう



すごく優しくて思いやりのある人だから



「でも、わたしの事が大嫌いでそう言ったのかもしれない…」



「あなたの大好きな優しいその男の子がそんなことすると思う?」



「…思わない、です」



「だったらもっと自信を持って」



このくらいでくじけちゃだめ



この先きっともっと辛いことがあると思う



でも、幸せなことだってたくさんあるはず



「わたしにはこんなことしかできないけど…」



「ううん、いっぱいありがとうございます」



女の子は泣いてた



それくらいサスケさんのことが大好きなのね



「がんばって、もう一回伝えておいで」



「うん、がんばる」



ありがとう、女神さま!



そう言いながら、女の子は目をごしごしして走っていった







わたしは女神さまなんかじゃないし願いを叶えることなんて出来ない。でも祈ることはできる



女の子とサスケさんが笑ってるところを想像しながら、わたしは祈った。





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ