「ゴエモンさんに悲しいお知らせがあります」
「な、なんでい…」
気持ち悪いくらいニコニコ笑うわたしが怖いのか、ゴエモンさんは戸惑いながらわたしに問いかける
そんなことはお構いなしに、わたしは黒い灰を手にのせてゴエモンさんに見せた
「これ なーんだ?」
「…灰にしか見えねえけど…」
「その通りです」
「それのどこが悲しいお知らせなんでい…?」
「その問いにお答えしよう」
座っていたわたしは立ち上がってゴエモンさんの服がしまってあるたんすの横に立つ
ゴエモンさんは何かに気付いたようで、サーっと顔をどんどん真っ青にしていった
「この灰の原形は、」
「…………………」
「このたんすの裏に隠してあったゴエモンさん愛用の本、俗に言う“えろ本”なのでした」
「………………」
ゴエモンさんは何か言いたげでずっと口をぱくぱくしてた
まあ、そんなに悲しむことはないよ。ゴエモンさん
「そんなゴエモンさんに、嬉しいお知らせがあります」
「こ、今度はなんでい…」
精神的に相当な傷をおったゴエモンさんにわたしは優しく優しく抱きついた
それだけで、さっきまで真っ青だったゴエモンさんの顔は真っ赤に変わっていく
相変わらずその口はぱくぱくしたまんま
「ななな、な?!」
「ゴエモンさん!」
ゴエモンさんの耳元に近づいてそっとわたしはささやいた。
「……………… 」
「えろ本を灰にされたのが悲しくて泣いてるの?」
「馬鹿野郎!そんなわけあんめえ!」
泣き止まないゴエモンさんの姿を見て、わたしの鼻がつーんとした
我慢できなくなって、わたしの目からも滝のように涙が流れる
泣かないってきめたのにな
「ゴエモンさんでよかった」
それだけ言ったわたしの唇をゴエモンさんは、その唇でふさいだ。
あなたとの子供ができました
(小さくささやいた言葉はこの世で最も幸せな言葉)