バテン

□その片羽で私をつれてって
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「つれてって」



両手を広げて、さっきまで地面に座っていた彼女が俺に言った。


彼女の横には人が大勢横たわっていて、さっきから全く動かない。



「つれてって」



早く、と俺をせかす


俺は彼女の横の人々が気になってそっちにばかり目をむけていた


それに気付いたのか彼女は少し黙ってから、また口を開いた



「みんな死んじゃった」



彼女の言葉を聞いてやっと納得した。驚きはしない、予想はしていたから。


細い腕が俺の服を掴む


太陽の光が彼女の茶色の瞳をてらした



「綺麗な片羽でわたしをつれてって」



壊れそうな細い彼女を抱き抱えて、心の羽をはばたかせた




勢いよく地面をおもいきり蹴飛ばして、飛んだ





「空だ」






できるだけ、遠く、上のほうへ






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