短編ゴ

□澄んだ空と同じ色
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ずーっと下ばっかり見てた



人と目が合うのが怖くって



いつからこんな自分になったかわかんないけど



とりあえず下をむいてれば不安にならなかったから。















「おめえ、いっつも下向いてんなあ」



いきなり下から知らない人に覗きこまれて、どうしようかと思った



「気分でも悪いのかい?」



必死にわたしの目を見つめてくる



わたしは必死に視線をそらす



出来ることなら早くどこかへ行ってほしい



気分が悪いんじゃなくて、あなたが怖いんです



あんまりわたしに関わらないで



「なんで目ぇ合わせてくんねえんだ」



そんなこと言われたって反射的にそらしてしまうんだもん



わたしのせいじゃ、ない



「おめえ、声も出せないのかい」



出せるか出せないかわかんない



もうだいぶ昔から声を出してないし、出し方も忘れた



出たとしてもきっと枯れてる



「なあ」



なんですか



「見上げたらいいぜ」



なにを



「空を」














くいっと、無理矢理あごをあげられた



空が眩しくて眩しくて目をつぶる



「ゆっくりでいいから、目を開けな」



いやだ



怖い



「おいらがいるから、大丈夫でい」



ほんと?



「約束するぜ」
















いっぱいの優しい 青



こんなにも澄んでいて、忘れてた声も出せる気がした



「、ぁ」



「おっ」



出せたな、なんて言ってわたしより喜んでくれた



他人のことなのに



「おめえみてえなやつぁ、ほっとけねえんでい!」















いつからか、あわせられなくなった目をあわす



まだ 怖い



「あせらなくていい」



うん



「大丈夫だからな」



大丈夫







ゆっくり閉じて、



ゆっくり開いた





(あなたの優しい 目)





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