愛、アイ、I

□日常風景―ミルフィオーレ棟より―
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「きりーっつ、きをつけー、れーい」

クラスの委員長がHRで号令をかけ、窓際の席だったオレは小さな欠伸を1つ。原因は夜中までベルのゲームに付き合わされた、が一番有力な原因だったりする。(ここだけの話、ベルはとてつもなく寝るのが遅い)(なのに起きるのはオレよりも早い)
それに+朝練もあったワケで、オレの眠気はピークに達してる。

「ふあぁぁ、…ねむ、」

「あっれー?今日の王子様はおねむなんだ♪」

いつの間にかHRは終わったらしく、前の席だったジンジャーがオレの机に頬杖をついていた。ジンジャーを前にしてまた欠伸1つ、それを見ていたジンジャーは苦笑しながらオレを見た。

「あはは、昨日は寝てないの?」

「ベルのゲームに付き合わされてた…」

「あー…君の弟クンかぁ、おっ疲れ様♪」

「うあー、ねむ…」

畜生ベルめ、これで今日1日授業が身に入らなかったら恨んでやる。ぜってー恨んでやる。今日は死んでも寝ないつもりだったんだぞ、だって今日の1現目は……

「ヒッ、何だ何だなーんだラジエル。今日は随分と眠そうだな」

「げっ、…出やがった…」

いつの間にかオレとジンジャーの隣で、ニヤニヤと、ほっんとニヤニヤと笑いながらオレたちを見下ろすのはこの学校って一番気味が悪いと名高い理科の教師…グロ・キシニアが立っていて。多分今のオレとジンジャーの顔は超がつく位に嫌な顔をしていると思う(グロだって血管がピックピクなってるし)

「…ほぅ、そんなに私の授業が嫌か?」

「当たり前だろー?グロ先生の視線って何か気持ち悪いしー」

「ヒッ、ジンジャー・ブレッド。そういうわりにはこの学年の理科の点数ではお前が一番いいんだか?」

「フフッ♪こう見えてボクは頭いいからねー」

実はというと、ジンジャーとグロ・キシニア先生は昔からの知り合いだとかでよく喋ってるトコロを見る(何処で知り合ったとかは知らないけど)
だから、この学校で唯一グロ・キシニア先生と張り合える生徒だったりもする。

「甘い甘いバァー♪大体…先生の問題は簡単すぎるんだよ」

「ヒッ、そうかそうかそーうか。なら次回のテストは最高に難しくしてやる」

「えー!?ちょ、オレはイヤだからなっ!」

冗談じゃない、と立ち上がって反抗するジル。(言っとくけど今は授業中だったりする)それには訳があって…オレは一番理科が嫌いだ。ほら…先生が先生だし。

「ヒッ、そういうお前の嫌そうにする顔!実にそそるぞ」

瞬間的に鳥肌。コイツのこういうトコロが嫌いなんだ、と心の中で吐き捨てながらどうやってこの状況を抜け出そうか思案中。不意に、目があったジンジャーが口パクで「行っていいよ」というもんだからオレは頭が痛いを理由に急いで教室を出た。

目的地は、サボりの定番…つまり屋上。


「…うわっ、」

屋上へと続く重い扉を開けると、顔に強く吹き付ける風に思わず前髪に隠れた瞳を細める。さすがに授業中というワケで、オレ以外に人は居そうにな……

「あっれー?何してんのー、ジルー」

…前言撤回。何か居たわ。

長い髪を風になびかせながら、まるで子供みたいにフェンスに半身を乗り出して空を眺めているのはれっきとしたオレよりも1つ学年の上のヤツで。
ソイツはオレの姿を見ると、自分の居たトコロからオレのトコロまでやって来てオレを見る。

「…何してるんスか、ブルーベル…先輩」

「授業サボって空見てた!」

「いや…そんなに得意気な顔で言える事じゃねーよ」

「ニュニュゥ〜、そういうジルだってサボる気なクセに…」

まぁ確かにそうなんだが。と苦笑混じりに笑えばクイクイと手をひかれてフェンスの近くまで連れていかれる。

「ココからだとねー、プールがよく見えるんだよ」

「プール?」

「プールの水が光に反射してキラキラなるのがキレイだもん!ずっと見てたくなるの!」

「へーぇ…」

そう言いながらずっとフェンス越しにプールを見つめるコイツの顔はキラキラしていて、まぁ噂によるとコイツは水泳部のキャプテンで高校生の中でトップクラスのタイムを誇るらしいし…(桔梗センパイの話だけど)
だからプールが好きなのかと1人で納得。

「…ふぁぁ、」

ヤバい、さっき治りかけてた眠気がまた復活してきた。フェンスにもたれ掛かって太陽の光に目を細める。(何故だかオレの横には同じようにブルーベルセンパイもフェンスにもたれ掛かってる)

「寝るのー?」

「ん、昨日あんま寝てないし…とりあえず3時現目までは」

「じゃぁブルーベルも一緒に寝る!」

「え、……ちょ」

オレの意見も聞かず、隣にいるコイツからは数秒しかたってないのに小さな寝息。(まるでの〇太だなコイツ)…まぁ、もうこの際どうでもいいんだけどさ。

オレも再度小さな欠伸を1つ。隣で寝るヤツと同じように、青空の下、二人揃って時間がくるまで寝る事にした。



日常風景―ミルフィオーレ棟より―
(ふーっ…やっと終わったぁ♪ジルを迎えに行かないとね)

(………あれ?)
((すー……すー…))
(…フフッ、もう少し寝かせておいてあげるかな?)
((すー……))

(それにしても…最近ジルのサボり癖は目立ってるなぁ)

 

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