愛、アイ、I
□つまり仲が良いということ!
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オレには、誰よりもお互いの事がわかる双子の兄が居る。…といっても、仲が良いかと聞かれれば返答には迷うし(オレだけなら即答なんだけどアイツがNOと言うだろうし) 、だけどお互いの事を一番わかる双子はオレらくらいだと思う。
「なー、ジル」
「………んだよ」
「数学の宿題見せて、」
「はあ?…んなの自分でやれよな」
「ヤーダ、だってメンドクセーじゃん?」
「お前なあ…」
とか言いつつも自分のバックから数学のノートをオレに渡してくれる辺り、無自覚なのか知らねーけど仲が良いんじゃねーかと思う。まあ、オレも受けとるとすぐに自分の部屋に戻るんだけどな。
オレとジルの部屋はお互いに向かい合わせ。部屋の造りなんかは同じなんだけど、全然違う。オレの部屋にはギターやらベースやらが立て掛けてあったり楽譜やらが散乱してる、いつも愛用してるヤツからただ飾ってるヤツまで幅広くね。
けど反対にジルの部屋はキレイに片付けられていて、まあデスクの上にバスケの雑誌があったりするだけ。あ、1つだけオレが買ってやったギターが飾ってあるっけ。
ししっ、姿は似てても中身は全然違うんだよね。オレらは。
「ベル様、もうすぐ夕飯の支度が整います。」
「ん、りょーかい。今から行く」
オレとジルの世話係として一緒に暮らしてるオルゲルトがオレの部屋まで呼びに来た。アイツ、外見はゴッツイくせに手先だけは器用でメシなんかはそこいらのヤツなんかより上手いんじゃね?って思う。
っつっても、ホントはジルだけの専属世話係なんだけどな。ほら、ジルって意外と天然だし?
「腹減ったぁー…」
「おっせーよベル、メシが冷めんだろ」
「だって誰かさんの宿題、間違いだらけなんだもん。オレが書き直しといたんだから有り難く思えよな?」
「えっ!?ま、マジで…?」
「うしし、じょーだんだって」
「ってめー…!」
からかったりしたら直ぐに本気にする所辺り、ホンットにバカで鈍感で天然だと思う。今だって、拗ねたのか口を尖らせたまま食べてるし?あーあ、ホンットに見てるだけでも飽きねーんだけど。わかってやってんのかねぇ、兄様は。
「いじけんなよージル」
「…別にいじけてねぇよ」
「いじけてんだろ、見りゃわかるし?」
「っ…うっせーバカ弟!!」
「いって!おまっ…フォークとか投げんな!!」
照れ隠しの一種、なんてな。んな可愛いモンじゃねーだろコイツのは、僅かにだけど殺気滲み出てんだけど。ま、オレ王子だし当たったりはしないけどね。投げられたフォークはオレの頬を掠めて後ろの壁に突き刺さる、あーあ、まーた新しいキズ増やしちゃってさ。オルゲルトに怒られてもしらねーからな。
「っ…クソ!」
「ししっ、ざーんねんでした!…さっさと食べようぜ?ジール」
「……あぁ、ったく…」
未だにブツブツ文句を言いながらも、渋々メシを食べ始めたジル。
ま、これがいつも通りの景色だしな。こーやっていつもと同じ事繰り返しても飽きねーっつーの。
「……で、何でミーにわざわざそんな事で電話してくるんですかー?」
「あ?あー……さあ?何となく話したかったんだよ」
「………はあー…」
そう、今はもう夜中。この家じゃ起きてんのはオレだけなんじゃねーの?…でも誰かに話したかったから仕方なーくコーハイに話してやってんの。ししし、王子やっさしー。なんて電話越しに言うとコーハイから「バカじゃないんですかー」の一言。
「つまりセンパイはただ兄貴サンの事を自慢したかっただけなんでしょー?」
「は?ちげーよ、何でわざわざアイツの事を自慢しなきゃなんねーんだよ」
「………あぁ、はいそーですねー。じゃミーはそろそろ寝ますんでー」
「あっ!ちょ、おい!!」
いきなりブツンの一方的に切られた通話。あ゙ーまだ話終わってねぇのに!アイツ、明日の学校ん時覚えてろよ。
舌打ち混じりにベランダから引き返す。オレの手は既に冷たくなっていて、ってか今の季節でも夜はさみーんだな。
「………………ししっ」
良いこと思いつーいた!
オレは自室のベッドには入らず、そのまま部屋を出る。目線は、オレの部屋をでて直ぐに見える扉…つまりジルの部屋に向いていて。
…ん?何するかって?ししっ、寒いし2人で寝た方があったけーんじゃねーかなって思ってな。どうせあのバカで鈍感で天然なアイツは、ベッドん中でぐっすりなんだろうし?多分朝まで気づかねーだろ、ってか朝起きた時のアイツの反応が楽しみなんだけど!
つまり仲が良いということ!
(ん……あれ?)
(うしし、おはよージル)
(っ!うわあぁ!な、なななんでお前がっ!)
(いいじゃん?お前だって夜中にオレに抱きついてきたくせに)
(!?し、知らねーよんな事!)
(…しし、まあ嘘なんだけど)