パラレル
□しあわせの温度/銀新【未完】
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午前7時半、マンションの玄関先で差し出されたランチボックスを受け取ると同時にその手を引きよせ、可愛い唇に行ってきますのあいさつをする。
週末をずっとベッドの中で過ごしていたっていうのに、一度触れるともっとキスしていたいと思わせる新八のやわらかな唇。
「…ンッ…」
腕の中で新八が小さく身を捩る。
「もう…銀さん…!」
「新八、もうちょっとだけ…」
しつこく新八の口腔を味わって、やっと唇を離す。
「…ふぁ…」
息をつく新八、ほのかに上気した頬がたまらなく可愛い。
思わず頬にも軽いキスを繰り返す。
「いい加減に…だめですったら…!」
いよいよ本気で抵抗を見せ始めたので俺もあきらめて腕の力を解く。
「まったく新八はケチンボなんだから…」
「そうじゃないでしょ!いい加減出ないと銀さんが遅刻するんですからね、もう!」
「はいはい、じゃあ行ってきますよ」
しょんぼりと離れた俺に新八が苦笑いする。
「今日は銀さんの好きなオムライス作って待っときますから、ね?」
「ほんと?じゃあ、上に旗乗っけてね?」
「はいはい、分かりました」
「あと、ケチャップで『銀さん大好き』で最後にハート書いててくれよ?」
「…はいはい」
「いや、それより『後で僕も食べてね』のほうがいいか…」
「なんですか、それ…」
「…ああ、それと!」
「まだあるんですか!?」
「変な奴が来ても絶対うちに入れるなよ?」
「もう、そんなに信用ないですか?僕」
「いや、俺が心配なだけ」
「大丈夫です、僕だって男なんですから!」
えっへんとばかりに胸を張るけど可愛いばっかりでまったく安心できない。
それに男はいつでも愛する者を守りたい、そう思うもんなんだよ新八くん。
「さあ、早く行かないと遅刻しますよ!」
「ああ…じゃあほんとに行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃいませ!」
言葉に添えられた新八の笑顔に心があったかくなる。
こいつの笑顔は俺にとって元気の活力、生きる源、それくらい俺は新八に惚れている。
毎朝繰り返されるこんなたわいもないやりとり、俺は今やっと生きたいと思う場所を手に入れたのだ。