銀沖長

□君のミルクを飲ませなさい 【前編】 
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それから、数日。

ついにその日を迎えた。
計画のための準備は整った。
あとは実行あるのみ。



普段は約束なんてしないけど、その日だけは沖田くんに連絡を取り万事屋に来てくれるようお願いした。

「呼ばれて来るなんて初めてでさァね」
「いや、あれからちょと反省してね。たかがいちご牛乳のことで言いすぎたなって」
「ほんとですかィ?なんか旦那がそんなにしおらしいのってちょっと薄気味悪いでさァ」
「そんなことないよ、正直あれは大人げなかったね」
「本気で言ってやすか?」
「本気本気、マジ本気」
「・・・なんか旦那、企んでやしませんかィ?」


ぐっ・・・鋭い!


さすが、あの新選組で隊長張ってるだけある。

ただ、今日ばかりは俺の真意がばれるわけにはいかねーんだよ。
ここは慎重に運ばねえと・・・

「ないない、企むなんて。僕は沖田くんに嫌われるのが一番イヤだからね」
「ふーん・・・ならいいですけど・・・」
「じゃ、ここで仲直りの乾杯しよ?今日はけんかしないように沖田くんの分のいちご牛乳もちゃーんと用意してあるんだよ」
「まあ、旦那がそこまで言うなら許してやりまさァ」

『許してやりまさァ』?

それって完全上目線??


何度も言うようだが、いちご牛乳飲まれたのは俺だっちゅーの!

でもここは我慢、我慢。
計画を破綻させるわけにはいかねえんだ。

そう、なんとしても今日はいちご牛乳を飲ませるまでは!



「さあ、乾杯だ、沖田くん!」
台所で用意したいちご牛乳入りのグラスを沖田くんに差し出す。
沖田くんは受け取りながらも訝しげな目で俺を見る。

「なんで今日はグラスに注いであるんです?」
「ああそれ?今日はたくさん飲めるようお徳用ボトルを買ったからね。後で足りない!とかって喧嘩になってもいやじゃない?せっかく仲直りするのにさ。だからここはそれ、遠慮せずぐぐっと飲み干してくれたまえ」
「ふーん、えらい気がきいてやすね」
「すべては沖田くんのためだよ」

そう『すべて』がね。
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