銀沖長

□きっかけは何とでもF 闇夜
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『お前は総悟の事になると熱くなりすぎる』

近藤さんに
「俺と総悟、ほんとはどっちを選ぶんだ?」
などとからかわれながらも曖昧に笑いを残し、まわされた腕をすり抜け屯所門前で総悟の帰りを待つ。
近藤さんの顔はよく見れなかった。

近藤さんと総悟、どっちがなんて比べようもないけれど、今は総悟の事で頭がいっぱいなんだ。
すまねえ、近藤さん・・・

袂に忍ばせた煙草に火をつけ、肺いっぱいに煙を吸い込む。
それでほんの少し、気分が落ち着いた気がした。

それにしても、何もせず待つこの時間の進みの遅いこと。
1秒が1分、1分が10分にも感じられる。
総悟が出て行って3時間ほどが経つ。
移動の時間を抜いても約2時間。

2時間・・・嫌な時間だ。
別れ話をするには長過ぎて、事を行うには短い―。

ガキの子守は疲れたとかい言いながら、総悟の縋る姿を見て色気を出したりしてないだろうか。
誰の手垢もついていない総悟の身体に消せない跡など付けてはいないか。

万事屋と総悟が絡み合う姿、想像するだけで血の気が引く。
くわえた煙草を携帯灰皿につぶし入れると、頭を大きく振りその想像を振り払った。

あいつにはいつまでもきれいなままでいて欲しい・・・
頼む総悟、・・・戻ってきてくれ!
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