銀沖長

□きっかけは何とでもB 二つ道
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ありえねぇ・・・
総悟があいつとなんて、絶対あっちゃならねえ。

総悟が去った後、俺は一人さっきのやりとりを思い出していた。

『もし俺が本気で抱かれたいと思ったら』

抱かれたいと思ったら?
そんなの俺が許さねえ。

総悟が幸せになるなら相手が誰でも俺がどうこう言う問題じゃねえが、あいつはだめだ。
あいつだけは・・・



俺は総悟が部屋にいるのを確認し、万事屋へ向かった。
総悟は『万事屋』とはっきり言わなかったが俺の予想はきっと当たってる。
そう思うともう、いてもたってもいられなかった。


万事屋はタイミングよく、奴一人だった。
新八くんたちにはこんな話聞かせられねえ。

「久し振りだな、万事屋」
「あれ?おたく誰でしたっけ?」
「ふざけるな。俺がここに来た理由、わかってるだろ」
「さあね。まあ、話があるなら座ったら?多串くん」

軽くいなされ俺はソファに腰を下ろした。
奴はのんきに耳垢なんぞほじってやがる。

「お前、どういうつもりだ」
「何が」
「総悟のことだ」
「どういうつもりって?」
「その・・・付き合ってるのか?」
「沖田くんがそう言ったの?」
「いや、はっきりとは・・・」
「だったら多串くんの勘違いじゃない?」

右耳の掃除が終わり、抜いた小指の先をふっと吹く。

「別に俺は沖田くんと付き合ってるつもりはないけど」
「なんだと・・・?」
「聞こえなかった?沖田くんとは付き合ってない、そう言ったの」
「じゃあ、なんで総悟はここに通ってる」
「さあ?何でだろうね」
「お前が呼んでるんじゃないのか」
「それはないねえ。第一君たち警察でしょ?正直そういう人たちがいつも来てるとなると逆に世間体悪いっていうかね」
「迷惑だっていうのか?」
「そこまでは言わないけど。まあ、沖田くんも屯所じゃ多少なりとも隊長っていう役付きだし、そういうのから時には解放されたいのかもって思ってみてるけどね。そういう深い意味はないと思うよ」

じゃあ、なぜ総悟は俺にあんな事を聞く。
少なくとも、総悟はお前の事をそういう相手として見てるからじゃないのか?

「だったら聞くが、お前、総悟とは何もないのか」
「たとえば?」
「その、抱きしめたり、キスしたり・・・」

言いながら、総悟とこいつが抱き合う様子が頭に浮かび、軽い寒気を感じた。
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