10title 文章2―you
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いつからだろう。こんな風に君が私の中に居るようになったのは。
「あれ、どうしたんですか?こんなトコで」
「お金なくて」
「タカリ?俺、そんなに持ってないですよ?」
諭吉先生と一葉女史と英世氏が三人ずつ、私のグッチの中に入っている。
「嘘」
「やっぱり」
君は笑う。屈託のない、と言うか幼い。
「君からはマイナスイオンが出ている」
ん?聞き返してくるその顔は無垢。
「何でもない。何か食べる?奢るよ」
「いいんですか?じゃ」
あそこ、と指差した先は大手ドーナツ店。
「ドーナツ?」
「俺、あそこのオールドファッション食べないと死んじゃうんです」
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