汝、風を斬れ

□第五章
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「セント!」
「ああ、わかってる」
 耳を澄ますと、少しずつ足音が近くなっているのがわかる。およそ十人。軽装なのだろう、金属の音はしない。

「そこ、守ってろよ」
 セントとの会話が途切れた。
 敵は存外に近い。

 狙いを定め、柄を先にしてナイフを投げる。カツンと間の抜けた音がして、どさっと人の倒れる音が続く。ジンは倒れた男の近くへ行き、その額のど真ん中に痣が出来たのを確認する。そして、動かないその身体を野に放った。
「ジン」
「姫」
 目を覚ました姫に、声を出さずに言って、ジンは唇の前に人差し指を立てる。

 音もなく敵の後ろへ回り、一人ずつ倒していく。
 ついに、敵は二人になった。
 しかし、一人は他方に引っ張られている。なぜだ。

「隊……長……!」
 まだ意識を失っていなかった者が、二人のどちらかに言った。
 セントは素早くその兵の近くに寄り、首の後ろを叩く。再び、その男は草に埋もれた。
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