† BOSS †
□哀しい貴女に接吻(くちづけ)を。愛しい貴女に別離(さよなら)を。
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在る高層ビルの屋上。
冷たいコンクリートの地面には、死体の位置のマークが殺風景にかたどられ、その周りには血飛沫の痕。
そんな殺人現場へ絵里子は木元を連れて、現場検証に来た。
鑑識に回せそうな証拠をせっせと採取する木元をよそに、絵里子は複雑な表情で、四方八方なんの遮りも無い景色を見ていた。
「ぼす、何してるんですか?」
「・・・木元、帰るよ。」
「え、もう?」
「いいから。」
絵里子はちらりと後ろを見ると、階段へと向かった。
木元もそれに続く。
次の瞬間、遠くから一発の銃声が響いた。
木元の目の前で絵里子が崩れ落ちていく。
咄嗟に抱きとめた木元にはなにが起こったのか分からなかった。
見ると、絵里子は心臓近くを背中から撃ち抜かれ、グレーのジャケットが真紅の血で染まっていた。
やっと事態が理解出来た木元は、絵里子の身体を支えながら必死に叫んだ。
「ボス!ボス!」
「・・・木、元・・・。」
木元は、苦痛で頬を引きつらせる絵里子の手を握り、懸命に呼び続けた。
絵里子は唇を薄く開き、なにかを言おうとした。
「ボス、ボス?!しっかりして!!」
しかし、絵里子の意識は薄れ、握る手の力も無くなっていった。
無情にも絵里子の手はずるりと地面に落ちた。
絶望的な気持ちで、木元は動かなくなった絵里子を見つめていた.
そして、そっと彼女の目を閉じてあげた。
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