02/17の日記

21:58
羨ましいな、チクショウ
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ウチの母親の弟、つまり叔父のアパートにいるのですが、
マジで羨ましいなぁ。
一人暮らしするには広すぎる。家賃は4万7千円の2DKだとよ。
それはともかく。
とりあえず、この御方は
未婚の40代
なんで、マジでお相手探してあげたいよ。
まったく、何を考えてるんだ(;´д`)

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07:33
PEACE。今回は長いので二分割。前編GO。
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4.

窓から朝日が差し込んできた。どうやら俺はいつのまにか眠っていたらしい。
(……)
俺の口内は起床時特有の不快な粘膜に包まれていた。どうも寝起きの口の中と言うのは気持ちが悪い。
俺はベッドから起き上がり、寝呆け眼になりながらキッチンへと足を運ぶ。
蛇口を捻り、コップ一杯の水を口に含んで粘液ごと濯いで吐き出し、口の中に残ったネバネバを排出する。
感じの悪いベージュ色のアメーバのようなものがステンレスの流し台を流れて排水溝に向かっていく。
結局、昨日は彼女から電話がかかってこなかった。場所だけでも彼女に言えればよかったのに。
……って、他人にのめり込んでまで俺が出しゃばる必要性も無いか。
俺は自分に苦笑し、カレンダーに目を遣って日付を確認する。
今日は土曜日、取り立てて最優先させるスケジュールは無い。即座に古本屋へと向かうつもりだ。
週三日の予備校。実際のところは休日も必死に自主勉強しなくてはいけないのだろうが、幸い今の俺は両親の目の届く範囲にいない。
そうだと言うのなら、これは金を稼がない訳にはいかない。
(社会勉強なら、文句は無いだろ?)
と、俺は鼻歌混じりで準備を始めた。例によって、ファッション雑誌のモデルが着こなしているような服装を真似ていない程度の、それでいて周囲と見比べて違和感の無い服装を身にまとい、煙草のヤニ臭さを隠すために香水を付ける。エゴイストと言う名前の奴だ。

プルルル……。
手鏡で自分の顔を眺めていると突然、電話が鳴り響いた。
「もしもし、田中ですが、どちら様でしょうか?」
俺は鏡を手にしながら受話器を取った。やはり俺が電話している時は、作り笑顔が貼り付けられていて、気味が悪い。
「あ、ヒラカズさん!?私、篠沢です!!」
電話をかけてきたのは篠沢言乃だった。朝からとても元気だ。何だか女版の店長と話している感じがしてきた。
「ああ、おはようございます」
俺はもう一人の俺として、のんびりとした口調で挨拶をする。
「あ、おはようございます。それと昨日は本当に済みませんでした」
衣擦れする音が聞こえてきた。これはきっと電話線の向こうで頭を下げてるな。俺は少し微笑ましい気分になった。
「いいんですよ、そちらの都合に合わせて頂いて。ところで昨日、バイト先の古本屋の場所を伝える事が出来ずに、済みません」
「とんでもない!私の方こそこれほどまで面倒を掛けてしまって……」
「いえいえ」
これ以上謝ってばかりいては話が進まない。
俺は確信付いた質問をする事にした。
「それで、篠沢さんは○○県の○○町と言う所まで来れますか?」
少しだけ不安になった。もしかすると、遠過ぎて無理なのではないか。
……本来不安になる要素はない。なぜなら、実際の目的は彼女のコミュニケーションの能力を向上させる事なのであって、別にアルバイトが出来なくなっても、違う方法を探せばいいのだから。
俺はただ純粋に篠沢言乃の姿をこの目で見てみたい、そう思ったからアルバイトの件を取り上げたのだ。何の事はない、興味本位の問題だ。
「○○町!はい、大丈夫です!」
明るい返事。そして、彼女は続ける。
「私、その隣町に住んでるんですよ」
それは俺の予想に反して意外なものだった。
「隣町……もしかして○×町じゃないっすか?」
俺は恐る恐る質問してみる。
すると彼女は驚いた様子で言った。
「そうです、知ってるんですかッ?」
口元を押さえながら驚いている様子がこっちにまで伝わってくる。
……偶然というのは恐ろしいものだ。俺の住んでいるアパートの住所こそ、○○県の○×町だったのだ。
「ええ、俺の住んでるアパートが○×町にあるんです」
「すごーい!世間って案外狭いんですね!!」
全くだ。現に今、俺もそう感じている。
「ええ。しかし驚きました。篠沢さんがうちのアパートの近くに住んでるなんて」
「私もです!ヒラカズさんみたいな優しい人がこの町にいるなんて、すっごい嬉しいです!!」
「……優しい?」
と、俺は思わず感情に任せるまま言葉を出してしまったのだ。
(篠沢言乃は、俺がどんな人間かを分かっていないからそう言えるんだ)
……失敗った。
思ってから不意に両親の罵声や受験に落ちた時の事を思い起こしてしまった。渾然と混ざり合ったそれらは、まるで真っ白いノートにコーヒーをぶちまけたような感じで、じわじわと俺に襲い掛かってきたのだ。
俺は早口になりながら、自分の世界を抜け出そうとして、表面上の自分を装って彼女の言葉に答える。
「そんな、俺はそんなに出来た人間じゃないですよ」
笑顔は崩れない。いや、崩さない。
「いいえ、私から言わせてもらうなら、ヒラカズさんは尊敬出来ます。私なんかに良くして頂いて……」
「……いやあ、照れますね」
表面上の俺は、恥ずかしそうだが、明るさのある声を発していた。
しかし、鏡に映る人間の顔は実に苦悩に満ちた、苦々しい微笑だった。
何かに疲れたような目付きで、口元は引きつり、脂汗が滲み始めている。
「……」
俺は言葉を発する事が出来なかった。
『ヤサシイ』
誰がだ、この俺が?
嘘だ、そんな訳無い。
「あの……、今から○×駅で待ち合わせしませんか?」
俺ははっとなった。沈黙を破るように、彼女から言葉を切り出してきたのだ。
「今から……。そう、ですね。そうしましょう。その方が分かりやすいですね」
俺はいつもの上っ面を取り返して、今までの沈黙など無かったように取り繕う。
「じゃあ俺はこれから出ます。また後で」
慌てて受話器を置いた俺。
息が荒くなり、俺はいつのまにか手鏡からは手を離していた。受話器を握る手のひらは、じっとりと汗ばんでいた。
(……いい加減に自己嫌悪は止めろ、止めろ……)
と、俺は自分に何度も言い聞かせる。
そして俺は不安を抑えるためか、無意識の内に煙草に手を伸ばしていたのだ。それに気が付いて、俺は手を止めた。
(今日だけ煙草は止めよう)
俺は煙草のケースを手に取り、ベッドの下の引き出しにしまった。
そして、俺はアパートを後にした。

いつもなら隣町には自転車で行く。節約にもなるし、まず第一にバイト先の古本屋はそれほど遠くないからだ。もし第一希望の大学に合格していれば、今頃アルバイトもせずにやれ免許だ車だと呑気な事を言っていられた。
しかし最低でもあと一年は受験生だ。周りの同級生がキャンパスライフを楽しんでいる時に、俺は必死に勉強だ。正直、やってられない気持ちになる。
昔の俺は医療の仕事に就きたいと思っていた。
漠然とした目標だったが、両親はそれこそ嬉々とした。教育熱心になった両親は俺に勉強の大切さや医療に従事する人間の心構えなどを教え込んできた。
彼らは厳しかった。少しでも間違ったことをすれば、昼夜問わず大声を張り上げて俺を怒鳴り付けていた。受け身である俺は、やはりそれに従わざるをえなかった。
当時、大学に受かる事だけが全てに思えたが、俺はその全てを理解しながら、ただ適当に親の機嫌を取って生活していた。
受け身ながら、ある程度勉強はしていた。試験当日も確かな手応えはあったかのように思えた。
しかし、俺は落ちた。
両親はがっかりしていたが、それ以上に俺はショックを受けていた。
慰めの言葉ほど、人間を傷付けるという事を両親は知らなかったのだ。
自分の部屋を暗くして早めに床に着いた時には、本当に死にたい気分に陥っていた。
この時から俺には二つの自分が形成されていた。何事にもそつなく対応出来る理想的な人間を気取ったモラリスト。笑顔という仮面を被っていて、誰からも好感を持たれる人間。そしてもう一つは、ひたすら自己嫌悪し、むしゃくしゃする気分を誤魔化すために煙草に手を出している人間。逃避ばかりするくせに理想と利益を追い求める利己主義者。
後者の姿は、瑠里と別れようとした時、すでにその存在は表れていた。

……やめよう、今こんな風に考えたとしても、何か変わると言うわけじゃない。
俺は胸元に手を伸ばした。しかし、そこには何もない。
(……ああ、そうか。置いてきたんだっけな)
自分の身体は無意識に煙草を求めていた。その行為を振り返ると再び際限無い自己嫌悪を生み出し、悪循環が始まる。最悪だ。
俺は舌打ちをして、ひたすら心の中の葛藤を偽善者の膜でコーティングしていた。

いつのまにか俺は○×駅へと辿り着いていた。
この駅の何処かに、篠沢言乃がいる。
途端に身体が強張ってきた。
どんな子なんだろうか。可愛いのか、そうでないのか。大きいのか小柄なのか。
思えば顔も歳も知らない彼女とは、間違い電話から始まった電話線一本だけの繋がりだ。なのにこうして彼女と待ち合わせだなんて、人生何が起こるかなんて予測出来ないものだ。
俺は駅構内で一番大きな柱のある所へ立ち、彼女を待つ事にした。
腕時計に目を遣る。まだ八時前だ。あそこの古本屋が店を始めるのは九時以降だから、まだまだ余裕だ。しかし、時計を巻いた方の腕を下ろした瞬間、俺は肝心な事を思い出した。
この女が篠沢言乃だ、と言える証拠が何であるかを俺は知らない。駅構内に来たものの、篠沢言乃が誰かと言う事をを知らないのなら探しようが無い。
俺は携帯電話を所持しているが、彼女の携帯電話の電話番号、メールアドレスを知らないため、連絡する方法が無い。彼女のパソコンのアドレスは知っていても、自宅にいる訳が無い。
(何やってんだよ、俺……。何で電話していた時に特徴とか聞いておかなかったんだよ……)
俺は忌々しげに低く唸り声を上げ、頭をくしゃくしゃにするように掻いた。何も出来ずに身動きが取れなくなった俺は、靴の先を見ながら柱の前で馬鹿みたいに立ち尽くしていた。

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07:31
PEACE後編
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「ねえ」
突如女の子に声を掛けられた。俺は弾かれたように顔を上げた。その先には見慣れた、しかし、見てはならない人間がいた。その少女の顔を見た途端、ざっと顔から血の気が引くような感覚を覚え、痙攣でもするかのように全身が引きつった。
そこにいたのは、瑠里だった。
「……瑠里」
喉の奥から絞り出すように出たのは、か細く、口にしたのかどうかすら定かではない声だった。
「わ、やっぱピースだ。元気してた?」
久しぶりの再会に、純粋に嬉しそうにしている瑠里。見た目の可愛さと持ち前の雰囲気はそのままだったのだが、あの時から全く別の時を過ごしたためか、彼女は随分と変わってしまった気がした。
俺が受験という壁の前で足踏みし、停滞している時、彼女はその壁を飛び越えて、未来へと歩き始めていた。自分と彼女との間に出来てしまった距離がただ無性に悲しかった。
「あ、ああ……」
「んふ、良かった」
可愛らしく笑顔を浮かべる瑠里。男心をくすぐる魅力はやはりあの時と変わらない。
(……やめてくれ)
俺は心の中で嘆いた。耳を塞いで蹲りたかった。
でも、無理だった。逃げられない。
傷口の上に出来たかさぶたを、無邪気な笑顔を浮かべた瑠里にゆっくりと、少しずつ剥がされていく気分だった。いつ、どのタイミングでかさぶたを一気に剥ぎ取られてしまうのか、俺は言いようの無い恐怖に包まれた。
「あたしも、ピースと別れてから色々あった。でも、ピースのお陰で今こうして――」
「……ゴメン、今は俺に話し掛けないでくれ」
苦し紛れに出てきた言葉はそれだった。
「……どうしたの?」
彼女は不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
目をくりくりとさせて、俺の目を見てくるのは昔と変わらない。
俺は、何も答えられなかった。
「あたしはもう気にしてないんだよ。それとも友達の関係として話すのも駄目なの?」
「……そう言う問題じゃないんだ」
そう言って俺は伏し目になった。もしこれ以上直視してしまえば心が潰れてしまう。
「顔もマトモに見てくれないか……悲しいな」
彼女はその時、何処と無く残念そうな笑顔を浮かべていた。
「でもさ。ピースがいなくてもさ、あたし、楽しいよ。だって、ピースがいたからあたしは――」
「黙れってんだよッ!!」
激昂して、瑠里に言い放った。
周りの利用客が好奇の目でこちらを見てくる。俺は気付かないふりをしながら、昂ぶる感情を沈めようとした。
少しの間が空いて、彼女は涙声になりながら呟いた。
「……何でそんなにあたしの事が嫌いなの」
俺は心臓を鷲掴みにされた気分になった。二年前、俺は彼女の質問に答える事は出来なかった。
言葉を発しようと口を開く。俺の口はふるふるとわなないていて、まるで窒息にでもなっているように口を開閉していた。
(また俺は彼女を傷付ける気なのか?)
俺は心に痛みが走った。
(また辛いシーンは無かった事にでもして逃げるのか?)
……いや、そんなの駄目だ。今、はっきりと言えないなんて最悪だ。
俺は勇気を振り絞って言った。今度こそは瑠里に本当の事を言おう、ただ一心にそう思ったからだ。
「……嫌いなんかじゃない、ただお前に対する気持ちが冷めちまったんだ。お前が好きだった、でも、それ以上にある子を好きになっちゃったんだよ」
一呼吸置いて、俺は続ける。
「……馬鹿らしいけどさ、お前に別れ話を持ちかけた後なんかもう、その子に対する熱はとっくに冷め切ってた。もう分かったろ?俺は身勝手な事して、お前の心を傷付けて、しかも一時期の感情に惑わされるような最低なクズ男なんだよ。なあ瑠里、俺をズタズタにしてくれよ。お前を訳の分からない理由で捨てちまったんだからよ。いっそ気の済むようにやってくれたっていいんだぞ。だから……」
俺は自分で言っている事がよく分からなくなっていた。
(俺は瑠里を傷付けた。だから罪悪感に包まれて、苦しんでいる。もう許してくれ)
詰まる所、俺が言いたい言葉はこういう意味なのだ。俺は散々、身勝手な事を言っていたのに、心の中では彼女に許しを請っていたのだ。すでにこれは、自己嫌悪だけで済ませられるような問題ではなかった。
俺はそんな自分がどうしようもないぐらいに情けなくて、とにかく悔しかった。
自然と目蓋の奥が熱くなってきて、鼻の奥がツンとしてきた。彼女は俺の目元に浮かぶ水を指で拭って、穏やかな笑顔を浮かべた。
目は潤み、今にも泣きそうだったが、次に彼女が浮かべたそれは確かに満面の笑みだった。
「ピースがそう言う風に面と向かって本心で話してくれたの、初めてのような気がする」
「……え?」
俺の口からは、泣きじゃくる子供のような声が漏れた。
「今までピースは肝心な所を有耶無耶にしてた。それで、全てを誤魔化してた」
彼女は鼻をすすり、袖口で自分の涙を拭った。
「でも、今のピース、前の時よりも格好良い」
「……何でだよ、俺にはもうお前との幸せな時間を作り上げていく事が出来ないんだぞ」
彼女は髪を振り回すように、首を横に振った。
「だってさぁ……もしそうだとしても、今までピースと過ごしてきた時間は、あたしにとって、すごく幸せだったもん」
軽い嗚咽が混じりながらも、瑠里は必死に思いを伝えてきた。
「ヨリ戻そうなんて言わないけどさ、あたしを嫌いにならないでよ」
透き通るような声だった。それは、俺がいつか見ていた、幸せな時間を共に過ごしていた彼女の声だった。
「それと、もう一つ。ピースっていっつも自分を責めてばっかだからさ、もう少し楽にしなよ。どんな時でも、ピースを思ってくれてる人は必ずいるんだよ?」
瑠里のその言葉を聞いた瞬間、俺の涙腺が完全に壊れた。呪縛から解き放たれた俺は、身体の力が抜けて、その場に泣き崩れてしまった。その時は何でそうなったかなんて分からなかった。
そんな俺を見た彼女は、俺の首に手を回して優しく包み込むように抱き締めてくれた。世界中の誰よりも優しい抱擁だった。
俺の泣き声は、いつしか啜り泣く程度のものになっていて、最後には涙を流すだけだった。
「……瑠里が羨ましいよ。どうしてお前はそんなに強くて綺麗に生きていられるんだ?」
「へへ、泣き虫ピースがいてくれたからだよ、きっと」
そう言う彼女の顔も涙で濡れていた。くしゃくしゃで、眼鏡のレンズが曇っていて、どうしようもないぐらい可愛かった。
瑠里は、こんな俺のために泣いてくれてる。
「……今更別れたくねぇよ。でも、俺は瑠里に相応しい男じゃないよ」
「ううん、私は今でもピースが大好き、ずっとずっと愛してる」
彼女がそう言ったのと同時に、俺の中で新たな決意が芽生えた。
(変わろう。今度こそ、瑠里を傷付けない)
「俺も大好きだ、瑠里」
「……嬉しい」
周りから歓声が起きた時、抱き合っていた俺と彼女はお互い周りを見渡し、少しだけ顔が赤くなった。






ピース、お前はホント彼女に恵まれてるよ。
駄目男ってこーゆー甲斐甲斐しい女の子にモテるよね。
あ、でも篠沢言乃はどうしたんだろうね?

ま、5にでも期待してくれればいいな。

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