03/01の日記

20:04
PEACEは少しお休みします。
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ついに私はワープロなるものを入手しました。
小説に改良を加えるため、当分載せません。

日記は更新します。ただ、忙しすぎるため、内容の薄いものになるやもわからんとです。
ピースだけは頑張ります。

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14:05
PEACE。短いけど、この8の話、俺は好き
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8.

日曜日。
朝からニュースの内容は脱線事故の事ばかりだ。犠牲者となった人間の名前が、無機質に字幕として印される。
……そこには、瑠里の名前もあった。俺は奥歯をぎりっと噛み締めた。テレビの画面を力一杯殴り付けたくなった。
「くそ……」
呻くように吐き捨てると、途端に鼻の奥がツンとしてきた。遣り切れない気持ちで髪の毛を掻き毟った。こんなことをしたところで何も意味などないのも分かっている。
(俺に優しさをくれる奴なんていらねえ……)
俺はベッドの下の引き出しを開け、貪るように煙草に手を伸ばした。口にくわえながら火を点けてゆっくりと煙を吸い込むと、全てを忘れさせてくれるような香りが俺の身体を満たしてくれる。
目蓋の奥はまだ熱を持ち続けていたが、いつのまにか目尻に浮かんだ涙は乾いていた。
(……ピース以外、何もいらねえよ)
部屋中にバージニア葉の香りが充満していき、白煙が辺りに漂う。俺にとって掛け替えの無いものは煙草だけで十分だが、こいつはいつだってすぐに灰になって消えてしまう。だから、俺の前からいなくならないように手を伸ばし、求め続ける。
……バイトだけは続けよう。こいつを欠かすことなんて、出来ない。
俺はゆっくりと立ち上がり、朝の支度を始めることにした。
身体が軋み、悲鳴を上げる。昨日あれだけしか走ってないのに、なんて体たらくだ。
俺は思わず擦れた声で笑ってしまった。身体を痛めても、見返りなど何も返ってこなかったんだ。滑稽で皮肉な話だと思わないか?

ひとしきり鏡の前で笑ってみせれば、今日もまた下らない日常が始まる。
俺は舌打ちをして、洗面台の前に立つ。
いつものように人込みに紛れても見分けの付かなくなるような服装に身を包み、ワックスで髪をセットする。
俺は鏡の隣にある引き出しを開けた。たくさんある香水の中から香水を取ろうとする。その中に一つだけ目につく香水があった。
(……エルメスのイリス、瑠里の……)
知的でシャープで、でも可愛らしい雰囲気を持っている瑠里には、この香水がとても似合ってた。
俺はゆっくりと香水に手を伸ばした。
ティッシュを取出し、その香水をしみ込ませる。ほんのりと甘酸っぱくて、さっぱりとした匂いがふわりと広がった。
そばに瑠里がいるような気がした。
“ピース”と、今にも俺のことを呼んでくれるのではないかと言うほど身近な匂いだった。
……煙草を吸っておいて良かった。瑠里のことを思い出しても、さっきより心が痛みが少なくて済む。
俺はその香水をごみ箱に投げ入れた。瑠里を失った悲しみを忘れたい、彼女が存在していたという痕跡を残したくない、ただそれだけだった。
フレグランス、ラルフローレンのロマンス。
数ある中からその香水を選び、俺はごく少量を身に付けた。煙草の匂いも、瑠里の匂いも全て消すためだ。
俺は靴を履いて、ドアに手を掛けて外へと出た。

信号が青から黄色に変わる。俺は横目で確認して、早足で横断歩道を歩いた。
肌寒い風が皮膚を突き刺してくる。顔の筋肉がピリピリする。日光に満ちているのは、所詮見せ掛けだけの明るさだ。暖かさなどあまり感じない。
「平和さーん!!」
遠くから俺の名前を呼ぶ声がした。透き通るような声だった。
振り向くと、後方の横断歩道の前で右手を高く振り上げている女の子がいた。篠沢言乃だ。
信号が青に変わると、彼女は俺のいる方へと駆けてきた。
「おはようございます!!」
彼女は息をはずませ、白い息を吐きながら、元気に挨拶をして頭を下げた。黒髪がさらさらと流れていく姿はとても綺麗だった。
俺は何事もなかったかのように微笑んだ。知らず知らずの内に偽善者の仮面を付けていたのだ。
「よかった、来てくれたんですね」
「ええ、一応」
素っ気ない言葉だった。働きに来た理由なんて一つ、ただ煙草を買う金を稼ぎたいだけだ。そのために足を運んだだけだ。日給の良い、ここのアルバイトを逃す訳にはいかない。
「さあ、行きましょう」
内面の俺の言葉を払拭するように表面上の俺は笑顔を見せた。
……エゴイストは死を望んでいるのに、上っ面の俺というのはどこまでも貪欲だ。慇懃に応対して、他人に愛想を振りまいて、生きるための処世術をフルに活用して生きようとしている。
生という糸にただひたすらしがみ付いている。まるで蜘蛛の糸の大悪党みたいだ。
血で満たされた池の地獄には二人の俺がいる。生に執着する俺と死を望む俺だ。
その地獄には一人だけしがみ付ける蜘蛛の糸がある。今、上っ面の俺がそれに掴んでぶら下がっている。もしエゴイストの俺がこの糸に捕まってしまえば、すぐに糸は切れてしまう。
掴めば切れる希望。そんなものに期待するなんて意味が無いのに、エゴイストの俺は糸を掴むかどうかを悩んでいる。おかしな話だ。
……とにかく今は余計なことを考えないで、バイトのことだけを考えれば良い。
俺は空を見上げた。
今日は雲一つ無い快晴で、清々しささえ感じる日のはずだった。瑠里が死んでしまっては、そんなのどうでもいいことだ。
煙草、煙草、煙草。
俺に必要なのは煙草だ。
手の届かない希望になんて縋らない。そんな糸がぶら下がってるのなら、俺が全部断ち切る。
しかし、まだ卒業式も迎えていないのに、こんなのでいいものだろうか。

「気を落さないでください。平和さんが悲しくて泣かないように、頑張りますからっ」
彼女は俺の心の中の懸念を読んだかのように声を掛けてきた。
彼女の方に顔を向ける。慈愛に満ちた可愛らしい笑顔だった。
(泣かないように、だと?)
少しムカついた。
「泣かねえっての」
俺は眉をひそめながら、思わず素の自分の言葉で返してしまった。
彼女は欣然として手のひらを合わせ、頬を紅潮させて笑顔を浮かべた。
「敬語じゃない!」
彼女は俺の左手を握り締めた。子供と手を繋いでいる感覚だ。
「平和さん、その方がいいです!いつまでも、作り笑顔じゃ疲れますよ!」
したり顔で言う彼女に、俺は呆気に取られた。
「感情出さないのって辛いんですよ?だからせめて、私の前では色々な顔を見せてください」
「篠沢さ……」
「言乃って呼んでください。その代わり、私もピースさんって呼ばせてもらってもいいですか?」
「え……ってか、待ってくださいよ。俺と普通に話してますよね。他人と話すの苦手なんじゃ……」
「苦手です」
きっぱりと言ってのけた。そして、さっそく俺をあだ名で呼んできた篠沢言乃。
「でも、ピースさんの心の穴を埋めることを目標にして、私が精一杯支えるって決めたんです。それとこれとは別です。だから、辛いときは寄り掛かっても良いんですよ?」
そう言ってから彼女は俺の背中にそっと触れる。
「あ、でも体重はかけないでくださいね。私、潰れちゃいますから」
俺は歩みを止めた。
不意に、目に涙が滲んできた。
嬉しかった。
彼女がこんなに俺のことを気遣ってくれたことも、ちょっぴり冗談を交えておどけていることも、全てが愛おしく感じるぐらいだった。
「それと、敬語は使わないでください。私は元がこうですけど、ピースさんは素の口調があると思いましたから」
「……分かった。今度から敬語で話さない。それで良いんだよな、……言乃?」
少し涙声だった。鼻をすすり、親指と人差し指で目頭を摘むように、涙を擦った。彼女に顔を見られないように、空を見上げて言った。
「はい!!」
元気な返事が返ってきた。きっと彼女は笑顔だっただろう。
空はどこまでも青くて、綺麗だった。太陽の光も暖かく感じた。
俺は言乃に背中をグイグイと押されながら、並木道を歩き始めた。

「でも、ピースさんってのは止めてくれよな。せめて平和さんにしてくれ」
「そうですか……」
言乃は少し残念そうに言った。





チクショウ、この場面、俺までコイツ等のせいでもらい泣きしそうになったじゃねぇか(;pд`)
自作自演で泣く馬鹿がどこにいるんだよ、ったく……。
ちなみに、ここでドリカムの『PROUD OF YOU』を流してもらうと嬉しい。
俺的なイメージソングにぴったりなんだ。
他に選曲あるならそれでも一向に構わないし、むしろ、それも嬉しいし。

この後どうなるのかな。分かんないけど、幸せになってほしいよね。

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