これが僕らの物語

□中村さんの物語
2ページ/8ページ

…私はこの男が間違いなく鬼だと思った瞬間だった。
「嘘だ、俺は公式のカードキャプターではない。封印の獣は桜に付いている」
男は悪戯っぽく笑う。
頼む、その姿で笑うのは本気でやめてほしい。寒気だけでは済まないんだよ。そしてその冗談は君が思っているほど可愛い冗談で通じない。分かっているのか?
「黙れ。…そういえばさっきから疑問に思ってるんだけど、お前はどうして飛べるんだ?」
どうして私が飛べるのか…?
それは君の杖がそうであるように、私のこれもそうであるからだ。
私の武器は×××××。これも名前は出せないので【アンノウン】とだけ言っておこう。
本来の武器の役割なら、この二本の棒が螺旋状に巻かれた槍に、赤い血のような液体がまとわりついて様々な形を表す武器だ。
今は私の背中に血のような液体をまとわりつかせ、大きな羽の形状にして飛んでいる。
「まるで堕天使だな。一枚の絵になりそうだ」
ふふふ、ありがとう。
褒めてもらって恐縮だが、君のその姿は寒気がする程似合わないよ。
「叩き落とすぞ」
…すまない。

「…ん、クロウカードの気配がする」
どうやら、としおはクロウカードの気配を感じ取ったようだ。この男、顔と体躯相応の魔力を備えている。一般で言えば純粋な魔力ではなくオーラや闘気に近いものではあるがな。
「行くぞ×××××」
やれやれ、人使いが荒いな。
私はとしおの後を追うようにして空を切り裂いていった。

「見つけたぜ、クロウカードッ!!」
と、突然杖が消え失せ、鍵の姿へと戻ってしまった。
「ほえぇ〜〜〜〜〜!!」
…うっ、その顔でその言葉はやめてくれ、全身に寒気が…。
としおは頭から真っ逆さまに落ちていく。
「助けろ××××ー×ッ!!」
―悪いがそれは無理だ、私は直接話の内容に関係しない。それと名前を呼ぶな。
私は血を見るのが大好きだ。どうせだから私に血を見せてくれ、としお。
「クソヤローッ!!闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ!!契約のもと、としおが命じるっ、…レリーズッ!!」
小さな鍵は再び杖へと姿を変えた。
「フライッ!!」
としおは瞬間的にカードを取り出し、カードを使う事が出来たので寸前の所でどうにか無事空に飛び立てた。
「×××××、あとで絶対にブッ殺してやる!!覚悟しとけ!!」
―ふっ、覚えておこう。それはとにかく。

…どうやらとしおがいる場所は公園の上空らしい。…すごい光景だ。公共物という公共物が目に見えない何かによって壊され続けている。
「あれは…、【パワー】のカードか。やつは力比べが大好きだとか言ってたな…。ならば…っ」
としおは杖から飛び降り羽をしまう。そして着地の瞬間、公園内に物凄い衝撃が走る。
着地できるなら最初から飛び降りればいいのに。それにしても高度が半端でないぐらいに高いはずなのに落下しても無傷なのは不思議だが、あの化け物じみたとしおなら納得がいくような気がする。
「パワーッ!!俺と勝負しろーっ!!」
その言葉が聞こえたのかパワーは姿を現した。

【パワー】。
としおの目の前に現れたそれは、見かけこそピンク色で小さく可愛らしい少女だが、その力は象一匹を持ち上げるほどの力を持っている。当然ではあるが、その一撃を食らえばひとたまりもない。
パワーはとしおに不適な笑みを浮かべる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ