SS置き場

□純粋な狂気
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儚くて美しい存在。

強くて優しい存在。

誰にも渡したくない。




彼は私のもの――。



「純粋な狂気1」



漆黒の空に色とりどりの眩い光。

静寂を掻き消し、大気を震わす夏の花。

一番高い山のてっぺんの、
大きな大木に腰を掛けて
花火を見る二人。

眩しい光が照らし出す穏やかな横顔を、
慈しむように見やり、寄り添う身体を
優しく抱き締めた。


「先生綺麗だな。 」


斑の肩に頭を預け、空を見上げる夏目。


「そうだな。
 だがお前の方がもっと綺麗だ。 」


歯が浮くようなことを言われた所為で
思わず木からずり落ちそうになる。

そんな彼をからかうかのように
覗き込み、顔を近付けて
心底嬉しそうに言う斑に夏目は呆れた。


「あのな〜先生。
 自分で言ってて恥ずかしくないのか!?
 因みに俺は呆れる…。」


そう言って斑の肩を押して
花火見えないから、
と身体の向きを変えさせた。

夏目の素っ気ない態度が
気に食わない斑は口を尖らせて拗ねる。


「私がせっかく本当のことを
 言ったというのに!
 夏目の阿呆!!」


抱いていた肩から腕を外し
頬を膨らませ、
子供みたいなことを言って
拗ねる斑が可笑しくて
思わず笑ってしまう。


「あははっ、先生子供みたい!」


その言葉にムッとするが
結局長くは続かない。


笑う夏目を引き寄せ唇を奪う。



「ちょ、危なっ…ンッ!」


驚く彼を余所に、細い腰に腕を回し、
しっかりと抱え込んで離さない。


太い幹に後頭部を押し当て、
深く甘い口付けを送った。






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