SS置き場

□繋がる
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「繋がる1」



「貴志君、今日から二日間、留守番頼むわね。」

「貴志頼んだよ、変な人が来たら出ないように。」

「は、はい!もちろんです。 

 ゆっくり楽しんで来て下さい。」

「ええ、ありがとう。

 お土産楽しみにしてて頂戴ね。」

「はい、楽しみにしています。

 塔子さん滋さん、行ってらっしゃい!」



「「行ってきます。」」



手を振る塔子さんと滋さんの姿が
見えなくなるまで、俺は見送った。

今日から二日間、結婚記念日のお祝いとして
二人は小旅行に出かけた。

毎年、記念日に行っているとのことで
本当に素敵だなと思う。

月日が経っても想いが
色褪せることのない二人を尊敬する。

気持ちを繋げ続ける為には
お互いの努力無くして成り立たない。

「…俺も頑張りたいな。」


「何をだ?」


「うわっ?!」

突然、耳元で囁かれた言葉に
驚いてしまう。

思わず囁かれた右耳を押さえて飛び退いた。

俺の反応に気を良くしたのか
やたら綺麗な微笑みで俺を見ている
人の姿の先生。

「先生びっくりするじゃないか!!」

「いい加減慣れろ、軟弱な奴。」

「軟弱って!

 いきなり耳元で言われたら
 誰だって驚くだろ?!」

「まあ怒るな、
 可愛い奴だと言っているんだ。」

「か、かわいいなんて嬉しくない!!」

顔を真っ赤にして否定する
夏目が可愛くて仕方ない斑は
ニヤニヤが止まらない。

「いい加減止めてくれよ先生。 
 あんまりからかうと口を利かないから。」

ジト目を先生に向ければ
降参したように手を上げた。


 








二人きりの藤原家は広い、はずなんだが…。

だが先ほどから窮屈で仕方がない。



夏目は昼食の用意をする為
キッチンにいる。


とりあえずカレーでも作ろうかと思い
野菜を切っている最中である。





「先生…狭いよ。」

「いいじゃないか別に。」

「良くないよ、危ないし…
 やりづらいし。」

「ん?何がやりづらいんだ?」

相変わらず耳元で囁くように
吐息をぶつけてくる。

さっきからこそばゆくて仕方ない。

平静を装っていた夏目だが
そろそろ限界になってくる。

しかも背中から覆い被さって抱きこまれ
腰に絡まっていた手が夏目の衣服を弄る。

顔が熱い。

恥ずかしくて死にそうだ。

手に力が入らなくなってきたので

危ない包丁はまな板の上に置いた。



「ちょ、先生!!止めろって!」



抗議の声を上げ、抱き込まれて
動かない身体の代わりに
首を捩ってもう一度
止めさせるように言おうする。


だが、


「ぅ、んっ?!」


突然激しい熱が口内を侵食した。

それが先生の舌だと気付くのに
数秒時間を要する。


ちょっと待ってくれ!!


叫びは外に発せられることはなく
口の中で消えた。


「…んっ、く…はっ。」


むせ返りそうな熱の所為で
だんだんと思考が低下してきた。

無防備な舌を絡み取られ吸われる。


今まで与えられたことがない刺激に
身体の力が抜けてどうしようもない。



「…も、だめ、…せんせっ、ぁはっ。」


辛うじて抗議の声を上げるも
聞き入れて貰えない。

それどころか身体の向きを変えられ
完全に先生と向き合う格好になる。

腰を抱きこまれ、
後頭部を押さえられる。

酸欠で目が眩みそうになってきた。

妖怪と人間じゃ肺活量も違いすぎる。

立っていることが出来なくなって
縋るように服を掴む。

必死に鼻で息をするが、ままならない。

息を吸おうと大きく口を開ければ
更に口付けが深くなる。

閉められない口の端から
透明な雫がこぼれ落ちた。

その様をうっとりと満足げに見やる斑。

潤んだ視界の先には
先生の綺麗な銀糸の髪が見える。

そして――

翡翠の瞳とバチリと目が合った。


ドクンッ!!



途端、音が聞こえるんじゃないかと
言うほど脈打つ心臓。

心臓が早鐘のように鳴り、悲鳴を上げた。

羞恥心が身体を駆け巡っていく。

もうだめだ!!!恥ずかしくて死ぬ!!

なけなしの力を振り絞って
拳に力を入れる。

「…っい、加減、止めろ!!
 はぁ…っこの変態ニャンコ!!!」


ゴッ!!


拳はストレートに額に命中した。


「ぎゃん!!」


ボンッ

衝撃で人の姿だった先生は
いつもの依代の姿に戻った。

額を押さえ、
暫くピクリともしない先生だったが
やがてのろのろと起き上がり
涙目で叫ぶ。

「なつめーー痛いではないか?!
 めちゃめちゃいい音したぞーー!!!!」

ムードが台無しだ、とか色気なしだの
何やら喚いていたが
俺はことごとく無視した。

何で俺が悪いんだ。

先生が止めてくれないのが
悪いんじゃないか。

心の中で愚痴ると、
ふぅーーーーと盛大に息を吐いて
俺はその場に崩れるように座りこんだ。


NEXT


やっとR18書けるー。
長かった…。
というか書くの恥ずかしかったんだよー。
ようやく踏ん切りつきました笑
エプロン姿の夏目君が可愛いとか妄想w
というか文化祭でエプロンしてたよね?
この二人はええカップルやなw


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