SS置き場

□遭遇
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うわぁ〜!!

まただ、突然あやかしに襲われる。

学校の帰り道。
塔子さんに頼まれたお使いを果たすために商店街に向かっていた。

……はずなんだが。

いつものことだから別段気にしないが、いちいち驚くのは仕方ないか。

前よりは慣れた。
が、慣れたからと言って驚かない訳ではないし、楽しくもない。

「レイコォ〜!!
 名を返せえぇ〜〜〜!!!」

「だからそれは祖母だってばっ!
 オレは孫だぁ〜!!」

いくら言っても無駄で、追いかけてくるのを止めなかった。
否応なしにそのまま商店街に入る。
全速力で走り抜ける俺を怪訝な目で見る人たち。

全く羨ましいよ。
俺の後ろにいる髪の長い某ホラー映画
に出てくるようなやつが見えないなんて。

魚屋に八百屋、花屋。
力一杯駆けていく。

『帰りにお肉屋さんに言って牛肉買ってほしいの、お願いね。
 今晩はすき焼きよ〜。』

塔子さんの言葉を思い出す。
あぁちょっと今は無理かも。
とりあえず人前から離れなくては――。
でも必ず塔子さんのお使いを果たさなくては――。

こんなときにニャンコ先生何してるんだよっ。
肝心な時にいないなんて。
用心棒失格だぞ!!
後で文句言ってやる。

心の中で一人愚痴る。

この町で居場所を失いたくない。
おかしな行動は慎まなくてはならない。
それなのに…。

とりあえず森に行って名前を返そうか。
それか近くに神社がある。
そこで一旦体制を整えようか。
足が鉛のようになってきた。

はあ、っはぁ…。

息も上がる。

まずは神社を目指そう。
それがいい。

後ろはなるべく見ないようにしたい。
だが距離も気になる。
意を決してそっと振り向いた。


あれ?
あれれ?

いつの間にか先ほどの空恐ろしい妖怪は居なくなっていた。
まけたのだろうか。
あまりに必死すぎて分からなかった。

何やら気配もしない。
諦めてくれたのかな?

ほっと胸を撫で下ろす。
全身の強張りを解いた。





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